研究実績の概要 |
本研究の目的は、半数体生物ゼニゴケの性染色体に存在すると予想される性決定遺伝子の同定である。これまでに、研究代表者らはゼニゴケY染色体の構造を半数体生物としては初めて明らかにし(PNAS 104:6472-6477, 2007)、さらにX染色体特異的マーカーを単離してX染色体の部分構造を明らかにしている。これらの成果に基づいて上記の課題に取り組むため、本研究では、まずX染色体に由来する塩基配列を収集し、Y染色体遺伝子情報およびRNA-seq情報を用いてX染色体遺伝子を探索した。 ゼニゴケX染色体のサイズは約20 Mbであるが、その約60%はX染色体特異的rDNAクラスターで占められる (Chromosome Res. 11:694-703, 2003; PNAS 104:6472-6477, 2007)。本研究では、X染色体のうち、rDNAクラスター以外の部分約8 Mbのみを対象とした。米国Joint Genome Instituteから提供されたドラフト・ゲノム・データには、常染色体とX染色体の配列情報が混在しているため(雌株を用いたため)、まずこれらのデータからX染色体に連鎖する配列を抽出した。雄ゲノムとの比較および遺伝子発現パターンの比較によりX染色体由来候補配列を選抜し、F1世代での連鎖解析を行ったところ、X染色体に由来する5配列を新たに同定した。 次に、様々な組織に由来するRNA-seqデータを用いてX染色体遺伝子の発現パターンの比較を行い、雌生殖器特異的発現パターンを示す遺伝子を選抜した。それらの遺伝子についてRT-PCRを行って発現特異性を評価したところ、これまでに1個の遺伝子が雌生殖器特異的に発現していることが確認された。類似性検索により、当該遺伝子はDNAメチル化の制御に関わるタンパク質をコードしていることが示唆された。
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