研究実績の概要 |
研究目的) 2型糖尿病(T2D)の遺伝的素因の解明のため, 全ゲノム相関スタディー(GWAS)などによりT2Dの疾患感受性遺伝子が次々と同定され海外では、現在までに80個余りのT2D疾患感受性遺伝子が報告され, その内, 2011年時点で14個のT2DM疾患感受性遺伝子が日本人T2Dと関連があることが確認されてきた。しかし, 個々の遺伝子の糖尿病発症のオッズ比(OR)については、1.1~1.5と低いものであり, T2D患者個々人の遺伝的素因について評価する際には, 一つ一つの疾患感受性遺伝子ではなくT2D疾患感受性遺伝子のrisk allele数の合計数(Genetic risk score;以下GRSと略す)で評価する必要があるが, GRSの臨床的な有用性や, 又GRSがT2D発症後にどのような影響を与えるかは現時点では不明である。そこで今回の研究では, GRSの有用性について評価する事を目的とした。 研究成果) 我々は, 14個のT2D疾患感受性遺伝子から成るGRSがT2Dの診断時年齢と有意に相関し, T2D発症後の独立したインスリン分泌(Insulin secretion; IS)低下やインスリン治療必要性(Insulin requirement;IR)の予測因子となる事を報告した(Iwata M et al. Diabetes Care, 2012)。又, 臨床情報との関連性について, このGRSと, 同じ遺伝情報である糖尿病家族歴(FHS)と比較検討したところ, ISやIRついては, GRSの方がFHSよりも強く関連する事が判った(Iwata M et al. EASD, 2013)。又, 共同研究を行っている理化学研究所からも49個から成るGRSに関して同様の知見が報告された(JCEM,2013)。これらの研究成果は, T2Dに関連したGRSを個々人で調べる事により, T2Dの発症予測や、将来的なIS低下, IRの予測に役立てる事が可能になると思われる。最終年度には, 共同研究を行っている東京大学から, 新規T2D疾患感受性遺伝子が報告され (Hum Mol Genet. 2014), 理化学研究所からも,海外で同定されたT2D疾患感受性遺伝子の日本人T2Dにおける再現性が検証された。
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