研究実績の概要 |
CCDC26は小児急性骨髄性白血病 (AML) の患者群中,小規模コピー数変動の見られる遺伝子のトップにランクされ、疾患との関連が示唆されている。転写物にコードされる仮想上のタンパク質(107 a.a.)は、既知のタンパク質との相同性が見られないため、機能性非コードRNAと思われる。CCDC26転写物はヒト骨髄性白血病細胞株K562細胞の核分画で多く見られるので、その機能を調べるため、shRNAを用いて遺伝子ノックダウン(KD)を行った。単離した株のうち4株で発現レベルが1%以下に抑えられていた。これらは前駆体RNAのイントロン部分も転写量が低下しており、通常のRNA干渉による転写後抑制ではなく転写抑制 (TGS)が起こっていた。CCDC26の2種類のsplicing variantの一方のみを標的とするshRNA-KD株で他方の転写も同じ様に抑制されたこともTGSを支持する。KD株はいずれも対照細胞に比べ15%血清存在下での増殖率の低下が観察され、逆に血清非存在下では、血清除去後の生き残り期間が延長された。KD株で共通して発現変動がある遺伝子をDNAマイクロアレイ、qRT-PCRによりスクリーニングしたところ、チロシンキナーゼ受容体KITに顕著な発現上昇が見られた。KITはAMLにおいて活性更新変異が見られる遺伝子のひとつである。KIT特異的阻害剤ISCK03でKD株を処理したところ、KD株の血清非存在下における生き残り期間の延長は解消された。以上から、骨髄性白血病細胞においてCCDC26がKITの発現調節を介して細胞増殖を制御していることが示唆された。従ってCCDC26の変異を持つ小児AMLに対し、KIT阻害剤が有効となる可能性がある。以上の結果は2014年度日本分子生物学会(演題番号3P-0273, 3P-0274)、Molecular Cancer誌で発表された(Mol. Cancer 2015, 14:90)。
|