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2013 年度 実施状況報告書

ヒトBACを用いた自閉症スペクトラム患者共通遺伝的リスク因子の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24510280
研究機関独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

井上 由紀子  独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第六部, 流動研究員 (30611777)

キーワード自閉症スペクトラム / SNP / ヒトBAC / BACトランスジェニックマウス / アンチセンスRNA
研究概要

近年行われたゲノムワイド関連解析の結果、自閉症スペクトラム(ASD)患者群で最も広く共有される6つの一塩基多型(SNP)が、染色体5p14.1に隣接するCDH10/CDH9遺伝子間の蛋白非コード領域に位置することが報告されている。本研究ではヒトゲノム配列を有する細菌人工染色体(BAC)を用いたトランスジェニックマウス作出技術を駆使し、このゲノム領域に中枢神経系における遺伝子転写調節活性が有るか否かを検証することを目的としている。
前年度は、ヒトBAC(#1)のみに含まれるASDリスクSNPに対応するゲノム領域が大脳皮質・線条体・小脳における転写調節活性を有することを明らかにし、このゲノム領域の塩基配列が霊長類では高度保存されているもののげっ歯類では保存性が低いことを見出した。平成25年度においては、ヒトBAC(#1)に対応するマウスBACを用いてエンハンサートラップを行った結果、中枢神経系における活性は無いことが明らかになり、ASDリスクSNP領域の脳における転写調節活性は霊長類特異的である可能性が示唆された。
また前年度中に、本研究対象ゲノム領域から新規アンチセンスRNA(Moesin pseudogene1 antisense)が転写されることが報告され、これがMoesin遺伝子から転写されるRNAと結合して、シナプス形成に関与するMoesinタンパク量を変化させることによりASDの病因に寄与することが推測されているため、ヒトBAC(#1)トランスジェニックマウス(レポーター遺伝子としてLacZを持つ)の大脳皮質・線条体・小脳から抽出したサンプルを用いて、アンチセンスRNAとLacZ RNAを定量したところ、両者には相関があり、本研究で見出したエンハンサー活性がアンチセンスRNAの転写を調節するものである可能性が高いことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初、ASDリスクSNPを含むゲノム領域が直近遺伝子のひとつであるCDH10発現調節に関わることを想定していたが、患者死後脳サンプルを用いた他研究グループの解析結果から、SNPジェノタイプとCDH10発現量の相関は無いことが報告された。また本年度、CDH10遺伝子そのものを含むBACを用いてエンハンサートラップを行ったところ、CDH10の特徴的な発現様式である前頭皮質における発現を含め、ほとんどの内在性発現を調節するエンハンサー活性は遺伝子近傍に存在することが明らかになり、ASDリスクSNP領域にCDH10発現に影響を与える遠位エンハンサーが存在する可能性は低いと考えられた。一方で、研究実績の概要に記したように、このゲノム領域から転写されることが報告されたアンチセンスRNAについて、そのエンハンサーである可能性を示すことができたので、研究目的であるASDリスクSNPを含むゲノム領域の脳エンハンサー解析としては十分に進捗していると考えている。

今後の研究の推進方策

平成24年度、平成25年度に得られた結果をまとめ、論文として発表する。
また、遺伝子をコードしないゲノム領域に存在する疾患関連SNPの機能解析法として、本研究により提示した「ヒトゲノム配列を有するBACを用いたトランスジェニックマウスによるエンハンサートラップ法」が有効であり、ポストゲノムの有益技術のひとつとなりうることについても、その利点を発信する。

次年度の研究費の使用計画

物品費が予定よりも少なかったため。消耗品の購入が予定より少なかったのは、試薬などを他研究課題と共用することにより、節約することができたため。
次年度は、論文投稿の際の査読料、追加実験のための消耗品購入費などを支出する予定である。また、成果発表を学会で行うための旅費等を支出する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Temporal identity transition from Purkinje cell progenitors to GABAergic interneuron projenitors in the cerebellum.2014

    • 著者名/発表者名
      Seto Y, Nakatani T, Masuyama N, Taya S, Kumai M, Minaki Y, Hamaguchi A, Inoue YU, Inoue T, Miyashita S, Fujiyama T, Yamada M, Chapman H, Campbell K, Magnuson MA, Wright CV, Kawaguchi Y, Ikenaka K, Takebayashi H, Ishiwata S, Ono Y, Hoshino M
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 5 ページ: 3337

    • DOI

      10.1038/ncomms4337

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Specification of spatial identities of cerebellar neuron progenitors by ptf1a and atoh1 for proper production of GABAergic and glutamatergic neurons.2014

    • 著者名/発表者名
      Yamada Y, Seto Y, Taya S, Owa T, Inoue YU, Inoue T, Kawaguchi Y, Nabeshima Y, Hoshino M
    • 雑誌名

      The Journal of Neuroscience

      巻: 34(14) ページ: 4786-4800

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.2722-13.2014

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A sharp cadherin-6 gene expression boundary in the developing mouse cortical plate demarcates the future functional areal border.2013

    • 著者名/発表者名
      Terakawa YW, Inoue YU, Asami J, Hoshino M, Inoue T
    • 雑誌名

      Cerebral Cortex

      巻: 10 ページ: 2293-2308

    • DOI

      10.1093/cercor/bhs221

    • 査読あり
  • [学会発表] Brain enhancer activities at the gene-poor 5p14.1 Autism-associated locus.2013

    • 著者名/発表者名
      Inoue YU, Inoue T
    • 学会等名
      Neuroscience 2013, the 43rd annual meeting of the Society for Neuroscience
    • 発表場所
      San Diego Convention Center, CA, USA
    • 年月日
      20131109-20131113
  • [学会発表] A 5p14.1 gene-poor region encompassing Autism Spectrum Disorder associated SNPs has enhancer activities in the developing brain.2013

    • 著者名/発表者名
      井上-上野由紀子、井上高良
    • 学会等名
      第36回日本神経科学大会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [備考] (独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第6部 第2研究室

    • URL

      http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r6/index-lab2/

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公開日: 2015-05-28  

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