• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

ホタテ貝中で進行する下痢性貝毒オカダ酸の構造変換

研究課題

研究課題/領域番号 24510291
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東北大学

研究代表者

此木 敬一  東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40292825)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードオカダ酸 / 下痢性貝毒 / 酵素精製 / 解毒機構
研究概要

[目的]日本沿岸域の養殖業を脅かす動物性食中毒の一種である下痢性貝毒は、渦鞭毛藻類Dinophysis spp.やProrocentrum spp.が生産するディノフィシストキシンやオカダ酸を主要原因毒とする。Dinophysis spp.が大量発生した海域では、二枚貝中に蓄積されたこれら化合物の大部分が脂肪酸の縮合した誘導体へ変換されるが、その機構は明らかにされていない。本研究ではオカダ酸をホタテ貝抽出物と反応させることで生成すると予想される誘導体をLC-MS/MSで検出し、下痢性貝毒変換酵素の単離・構造決定を行い、食品衛生のさらなる改善に貢献することを目的とする。
[結果](1)まず、パルミトイルコエンザイムAおよびアデノシントリリン酸(ATP)共存下、オカダ酸(OA)をホタテ貝の中腸腺をすり潰して得られるタンパク溶液と混合させることにより、OAの7位水酸基がパルミトイルl化された誘導体が生じる事を確認した。ただ、この変換反応の収率は最大で0.5%程度であり、実際に貝毒が発生した地域に生息するホタテ貝が蓄積する誘導体量と比べて極めて低かった。(2)そこで本変換反応の最適化を行った。ホタテ貝の各臓器からタンパク質液を得て同様の変換反応を実施したが、変換反応は最初に行った中腸腺の抽出物を用いた時のみであった。また、時間、温度、pHの条件を変えて変換反応を実施したが、変換反応の大幅な収率向上には至らなかった。(3)(2)で最適条件とされた2時間、37℃、pH 6の条件で本変換酵素の単離を目指したが、本酵素が膜タンパク質である可能性が生じた。膜タンパク質を精製する際に使用する界面活性剤はLC-MS/MSの感度を低下させる性質を示すことが知られており、LC-MS/MSを用いずに変換反応を検出する新たな方法の開発が望まれた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初想定した変換反応がホタテ貝中腸腺抽出物を用いた場合に進行する事が明らかとなった。種々の条件検討を行ったが、自然界で毒化するホタテ貝等が蓄積する変換反応の収率には遠く及ばず、本酵素の精製に向けて不安材料となった。当初、想定した変換反応収率が得られなかった原因の一つとして、変換酵素の不安定性が挙げられる。また、本変換酵素が膜タンパク質である可能性が高まり、界面活性剤を使用する分離方法を採用しなければならない。この場合、質量分析(LC-MS/MS)を用いる酵素画分の同定が困難となる。そのため、界面活性剤の共存下においても本変換反応を検出できる迅速かつ簡便な方法の開発が望まれた。実際に代替法の開発を行っているが、代替法の鍵となる共役ジエン部分を末端に有する長鎖脂肪酸のコエンザイムAエステルの調製に至っていない。以上の経緯を踏まえると、ほぼ計画通りであるが、変換酵素の検出法を新たに開発しなければならなくなった点で、平成25年度以降の計画に遅れをきたす可能性がある。

今後の研究の推進方策

【現在までの達成度】にも記載したが、現在、質量分析(LC-MS/MS)に替わる新たな変換反応検出手法の開発を行っている。共役ジエンを有する生理活性物質(ビタミンDなど)はDMEQ-TADという蛍光試薬とDiels-Alder反応することで蛍光標識され、高感度検出されることが知られている。そこで、今まで変換反応に用いてきたパルミトイルコエンザイムAに替わる脂肪酸コエンザイムAとして、共役ジエンを末端に有する脂肪酸とコエンザイムAの縮合体を用いれば、変換反応終了後に変換生成物を検出する事が可能であると考えた。この検出法は界面活性剤共存下でも進行すると考えられ、また鍵となるDiels-Alder反応も瞬時に進行し、生成物は薄層クロマトグラフィーで検出可能である。中腸腺抽出物を種々の方法で分離して行く過程で生じる多数の画分を一斉分析することも可能であり、問題点を克服する手法となりうる。

次年度の研究費の使用計画

最初の半年で末端ジエン部分を有する不飽和脂肪酸のコエンザイムAエステルを調達し、残る半年で本化合物を用いた代替検出法を用いて変換酵素の単離を目指す。そのため、前半は化学合成に伴う支出、後半はタンパク質精製に係る支出を予定している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] In Vitro Acylation of Okadaic Acid in the Presence of Various Bivalves’ Extracts2013

    • 著者名/発表者名
      Keiichi Konoki, Tatsuya Onoda, Ryuichi Watanabe, Yuko Cho, Shinnosuke Kaga, Toshiyuki Suzuki and Mari Yotsu-Yamashita
    • 雑誌名

      Marine Drugs

      巻: 11 ページ: 300-315

    • DOI

      10.3390/md11020300

    • 査読あり
  • [学会発表] クロイソカイメン中でオカダ酸およびオカダ酸結合タンパク質OABP2を生産する生物の探索2013

    • 著者名/発表者名
      小濱 真実、岡田 華弥、西谷 豪、長 由扶子、山下 まり、此木 敬一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] 下痢性貝毒貯蔵生物における自己耐性機構の探索2013

    • 著者名/発表者名
      小野田 竜也、渡邊 龍一、長 由扶子、加賀 新之助、鈴木 敏之、山下 まり、此木 敬一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20130324-20130327
  • [学会発表] Self-defence mechanism of diarrhetic shellfish poisoning toxins-accumulating species2012

    • 著者名/発表者名
      Keiichi Konoki
    • 学会等名
      The 1st International Symposium on Chemical Biology of Natural Products: Target ID and Regulation of Bioactivity
    • 発表場所
      京都センチュリーホテル(京都)
    • 年月日
      20121031-20121111
  • [学会発表] 質量分析を用いたイチイ中のタキソール結合タンパク質の探索2012

    • 著者名/発表者名
      工藤佑馬、阿部晃大、長由扶子、山下まり、此木敬一
    • 学会等名
      日本農芸化学会東北支部会第147回大会
    • 発表場所
      弘前大学
    • 年月日
      20121006-20121006
  • [学会発表] ホタテ貝中の下痢性貝毒変換酵素の探索2012

    • 著者名/発表者名
      此木敬一、小野田竜也、長由扶子、加賀新之助、渡邉龍一、鈴木敏之、山下まり
    • 学会等名
      第59回毒素シンポジウム
    • 発表場所
      とかちプラザ(帯広)
    • 年月日
      20120830-20120831
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi