研究課題
基盤研究(C)
独自に構築した植物エキスライブラリー(約1000種)に対し、蛍光を示すエキスについて検討を行い、ニガキ科を中心とした数種の植物について蛍光活性を持つことが明らかとなった。特に先行して研究継続しているブラジル産薬用植物Quassia amaraの樹皮に含まれるカルボリン-カンチンのダンベル型構造を持つ新規蛍光化合物Amarastelline A について、各種溶媒での蛍光特性を評価したところ、クロロホルム、メタノール、DMSOでは、高い蛍光量子収率を示したが、アセトニトリル、トルエン、水では、低い蛍光量子収率を示した。カンチン部分について化学的に類縁体を合成したのち、同様に溶媒による蛍光特性を評価したが、大きな差異は見られなかった。Amarastelline AのHeLa細胞に対する染色特性について調べたところ、染色持続時間と安定性については非常に高く24時間を越え、安定した染色を示した。細胞殺傷性は見られなかった。さらに細胞への染色を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて調べたところ、核以外の部分について広く染色を行うことが明らかとなった。FACSを用いて細胞導入率を評価したところ97%を超える高い細胞導入率を示した。 以上を論文としてまとめた。(Taniguchi, K. et al. Chempluschem, 2012, 77, 427-431.)Qussia amaraの中性画分より、amarastelline Bを単離した。amarastelline A とは蛍光特性が大きく異なる物質であることが明らかとなった。Amarastelline Aの合成研究は、amarastellin Aがカルボリン-カンチンダンベル構造を有することから、合成の最終段階で二個のユニットをカップリングさせる収束型経路を用いて開始することにした。本年度は各ユニットの合成をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
現在までの研究成果について、詳細な検討を行うことにより、Chempluschemに論文として投稿し掲載することが出来た。さらにQuassia amaraの蛍光類縁体を見出し蛍光特性に違いが認められたことから、amarastelline Aとの構造と蛍光特性との比較検討を行うことが可能となった。一方で、amarastelline A の初めての全合成に着手したことで、全合成やその過程で合成される類縁蛍光物質について量的なことも含めて安定供給することが出来る見通しである。 今後合成的手法により得られた化合物については、蛍光特性や細胞導入試験を行うことによって、構造による蛍光特性の違いについて評価することが出来る予定である。細胞核の非染色の解明については、現在、細胞抽出および分画を行い検討を行っているところである。Amarastelline A の全合成研究については分担者である福山教授らにより着手された。そのほかの蛍光を持つ成分を含むとされる植物について、蛍光成分の分離も同時に開始した。合成研究については市販のトリプタミンを常法によりアセチル化後,Wangらの方法に従いHecdrickson試薬を用いて反応させた結果、二段階46%の収率でカンチン前駆体harmanを合成できた。一方、トリプタミンの一級アミン部を塩化アクロイルでアミド化後、TFA溶媒中Et3SiHでインドール部を還元し、二段階86%の収率でインドリン体を得た。さらにインドリン中間体をNaWO4/H2O2で酸化後、MeIで処理することで鍵中間体N-メトキシインドールへ誘導できた。
Quassia amara由来の類縁蛍光物質については、今後も探索を続行する予定である。得られた類縁体については構造を明らかにするとともに蛍光特性について種々の溶媒による特性変化や、HeLa 細胞を用いた細胞への導入特性など、さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光イメージリングについて評価を継続的に行っていく予定である。さらに、合成的手法による蛍光化合物を種々得ることによりさらに検討を展開する。 一方で、他の蛍光物質を有する薬用植物については、同様に蛍光成分を詳細に明らかにしていく。 安定供給できる蛍光化合物については、蛍光イメージリングを種々の方法を用いて開拓し、天然蛍光イメージリング剤の創製と応用研究を試みる予定である。合成研究についてはまず、合成したharmanからカンチン構造をもつcanthin-6-oneへの誘導が最初のステップとなる。Harmanからカンチンへの変換はFischerの手法を応用し、カンチン構造を構築する計画である。一方カルボリンユニットは、得られたN-メトキシインドールの環化反応により短段階で誘導可能と考えられ、最後に両ユニットを塩基存在下カップリングさせることでamarastelline Aの合成を完了する計画である。本合成法は高い基質一般性が期待できることから、この合成戦略を応用すれば、様々なamarastellin類縁体合成が可能となる。類縁化合物の構造と蛍光特性の関係を明らかにすることにより、さらに強力な新規蛍光化合物の創製を行う計画である。
ガラス器具類、有機溶媒、試薬、 細胞培養用消耗品、細胞、HPLCカラム、担体などの消耗品、および、学会発表費用として使用する予定である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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