研究課題/領域番号 |
24510293
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大崎 愛弓 日本大学, 文理学部, 准教授 (50161360)
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研究分担者 |
福山 愛保 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70208990)
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キーワード | 薬用植物 / アルカロイド / 蛍光イメージリング / 蛍光特性 / 全合成研究 |
研究概要 |
ブラジル産薬用植物Quassia amaraに含まれる蛍光成分Amarasterlline Aの構造とその溶媒による蛍光特性について検討を行った。さらにAmarastelline AのHeLa生細胞への細胞導入について、共焦点レーザー顕微鏡およびFACSによって、検討をおこなったところ、HeLa生細胞への導入率は97%であり、核を除く細胞質のみを緑色に染色することが明らかとなった。 (Taniguchi, Ohsaki, et.al. ChemplusChem, 2012,77. 427-431.) 本年度はAmarastelline Aの類縁化合物である新規蛍光化合物Amarastelline B の単離構造解析と、蛍光を持つ類縁のカンチン骨格とまた蛍光を持つカルボリン骨格の化合物類の単離構造解析を行った。カンチン骨格は官能基の位置によって、大きく蛍光特性は著しく変化することが明らかとなった。 それらの詳細な検討を今後の検討課題の一部とする。一方、なぜ細胞質のみを染色するのかという疑問について検討を行うために、amarastelline Aのカルボリン部位を脂溶性基から芳香族へと変化させたの数種類縁体について合成をおこなった。 一方、Amarastelline Aの全合成研究については、カンチンユニットとN-メトキシカルボリンユニットを合成の最終段階でカップリングさせる収束型合成を検討した。引き続き、各ユニットの合成を行った結果、二段階で誘導したharmanに対してFischer の手法を用いてカンチン部となる天然物Canthin-6-oneを合成した。また、トリプタミンのインドール窒素の酸化により、N-メトキシカルボリン部の合成にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の達成としては、新規蛍光化合物Amarastelline Bの単離構造解析とAmarastelline Aの類縁化合物群の合成の成功がある。 また、Amarastelline Aはカンチンおよびカルボリン構造の間にリンカーとしてエチレンを含むダンベル構造を持つが各々のユニットについて類縁化合物を種々単離することが出来た。 それらの類縁構造は、カンチンおよびカルボリン骨格とも蛍光を示すことが明らかとなり、さらにカルボニルおよびヒドロキシ基などの官能基の位置により蛍光は大きくシフトすることが明らかとなった。各々の化合物の蛍光特性について溶媒による蛍光特性について検討をおこなった。 Amarastelline A の全合成研究については、トリプタミンから二段階で調製したカルボリン体harmanに対してDMSO溶媒中シュウ酸ジベンジルと反応させたところ、中程度の収率でN-benzyl-canthin-6-oneが得られた。ベンジル基を接触還元で除去し、canthin-6-oneを合成した。トリプタミンの一級アミン部を塩化アクロイルでアミド化後、TFA溶媒中Et3SiHでインドール部を還元し、二段階96%の収率でインドリン体を得た。さらにインドリン中間体をNaWO4/H2O2で酸化後、MeIで処理しN-メトキシインドールへ誘導した。しかし、続くカルボリン形成反応は種々反応条件を検討したが、生成物の不安定さ及び高温下での反応条件のためカルボリン体を得ることはできなかった。次にトリプタミンをアセチルアミドとした後、同様の条件下インドールの酸化をおこない、カルボリン合成を試みたところ、オキシ塩化リンで環化後、二酸化マンガンで酸化することで低収率ながら、N-メトキシカルボリンユニットの合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
Amarastelline Aの類縁化合物の合成については種々の構造について合成が完了したことからこれらの化合物を用いて、Amarastelline A がなぜ細胞質を染色するのかということについての検討を行うこととする。同時にこれまでの結果からカルボリン部位は細胞染色に必須な要素であるのかどうかの検証も行うこととする。 一方、なぜ、核は染色しないのかという事実については、Amarstelline Aの細胞導入後に細胞分画を行い、それらを蛍光HPLC検出を用いて核内への導入があるのかどうかについて検討を行うものとする。 さらに種々のカルボリン骨格およびカンチン骨格を持つ誘導体と蛍光波長変化があったことから構造と蛍光特性についての議論を行っていく予定である。 現在、別種の植物から蛍光を持った新規な化合物の探索についても研究を開始している。これらのことを基にして、さらなる強力な新規蛍光化合物の創製をへと展開を行う予定である。 一方、全合成を目指した研究については、合成したカンチンユニットcanthin-6-oneとカルボリンユニットを塩基存在下カップリングさせることでamarastellin Aの合成を完了する計画である。各ユニット合成において低収率な段階の最適化とともに、両ユニットのカップリング反応を検討する。本合成法が確立すれば、様々なamarastellin類縁体合成が可能となる。類縁化合物の構造と蛍光特性の関係を明らかにすることにより、さらに強力な新規蛍光化合物の創製を行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
化学的な部分を中心に研究展開が行われたこともあり残額が生じた。残額については、細胞への導入試験に使用を行う予定である。 細胞、細胞培養容消耗品、試薬、ガラス器具および学会発表費用として使用する予定である。
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