研究課題/領域番号 |
24510293
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大崎 愛弓 日本大学, 文理学部, 准教授 (50161360)
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研究分担者 |
福山 愛保 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70208990)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薬用植物 / アルカロイド / 蛍光イメージリング / 全合成 |
研究実績の概要 |
新規蛍光物質であるAmarastelline Aにおける二つのユニットのうちカルボリンユニットがエチル基であるエチルカンチンについて,HeLa生細胞への細胞導入実験をおこなったところ細胞を染色することが出来ず,カルボリン部分は細胞への導入に必要なユニットであることが推察されていた。この事象について明らかにすることを目的として,ブチル,オクチル,フェネチル,ナフチルなどの各種誘導体作成を行い,それらの各種溶媒における蛍光特性を測定した結果,蛍光特性に変化はなかった。次にHeLa生細胞への導入試験を行った。その結果,誘導体において有効な結果を得たことから,カルボリン部は必ずしも必要ではなく,さらに有用な生細胞への染色がスムーズに行える化合物のデザインが可能であることが明らかとなった。これらの結果に基づいて,詳細な細胞導入実験を行っていく予定である。蛍光標識部位としてのカンチンと細胞導入部のデザインにより,新しい蛍光染色剤,蛍光センサーの開発の起点となりうるものと考えられる。
一方,Amarastellin Aの全合成を目指し、カンチンユニットとN-メトキシカルボリンユニットを最終段階でカップリングさせる収束型合成を検討した。これまでに各ユニットとなるcanthin-6-oneおよびN-メトキシカルボリン部の合成を達成しているが、各ユニットの合成収率が低かったため、両ユニットの構築法を再度検討し、収率改善をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AmarastellineAは新規な生細胞染色剤として,興味ある化合物であるが,本化合物はカンチンおよびカルボリンがエチレンチンカーを介して結合するダンベル構造を持つ。カンチン部位が蛍光部位であり,カルボリン部位は細胞との接着に関与する基であることが推察されていた。新規蛍光物質Amarastelline Aの類縁体合成を各種行うことにより,ダンベル構造内部のカルボリン部位については必ずにも必要ではなく,他の脂溶性基によっても細胞導入が行えることが明らかになったことにより,蛍光染色剤,蛍光センサーとしてカンチンが利用出来うる可能性が見出せた。本結果により,さらなる蛍光デザインが可能となりうる。今後さらなる詳細な検討を重ねていく予定である。
全合成研究研究については各々のユニットに対し,以下の達成を行った。(Canthin-6-oneの合成)トリプタミンから二段階で調製したカルボリン化合物harmanに対してDMSO溶媒中シュウ酸ジベンジルと反応させ、N-benzyl-canthin-6-oneを得た。反応後の抽出過程において収率の低下が認められたことから、凍結乾燥によりDMSOを除去することで収率を67%まで改善することができた。(N-メトキシカルボリンの合成)昨年までの研究によりN-methoxyharmanの合成には成功しているが、再現性および収率に問題があった。低収率であったピリジン環構築を詳細に検討した結果、オキシ塩化リンを用いる環化反応、薗頭反応によるアルキル鎖の導入、そしてハロゲン―金属交換反応を利用した増炭反応など種々の反応条件を試みた。しかし、オキシ塩化リンを使用した場合には少量の目的物は得られたものの、いずれの場合もN-メトキシ部の酸素―窒素結合の開裂を生じ、収率よく目的物を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Amarastelline類縁体の生細胞導入実験の結果を受けて,細胞内での染色部位についての検討を行う予定である。さらに蛍光剤としてのデザインについて創製を行うことに視点を向けていく予定である。一方,更なる天然蛍光物質の探索を目指し,ニガキ科類縁植物の蛍光物質探索を開始している。蛍光天然物質の探索は化合物の安定性の問題を克服し,分離,分析について創意工夫を行うことにより,新たな天然蛍光物質,新規蛍光物質の分野開拓が行えるものと考えている。
全合成研究については,これまでの研究によりN-メトキシ化合物の不安定性が明らかになったことから、合成の最終段階でN-メトキシ化をおこなうことにする。まず、合成したカンチンユニットcanthin-6-oneとカルボリンユニットのカップリング反応を検討し、amarastellin Aの骨格構築を目指す。骨格構築を成功できれば、これまでのN-メトキシ化反応を適用し、全合成を達成する計画である。本合成法が確立すれば、様々なamarastellin類縁体合成が可能となり、類縁化合物の構造と蛍光特性の関係を明らかにし、さらに強力な新規蛍光化合物の創製を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
化学的な部分に多く研究展開が行われたこともあり残額を生じた。残額については細胞への各種の実験を行うこともあり,使用を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞,細胞培養消耗品,試薬,ガラス器具および学会発表費用として使用する予定である。
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