研究課題/領域番号 |
24510294
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
永井 宏史 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (50291026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 刺胞 / タンパク質毒素 / エチゼンクラゲ / 麻痺活性 |
研究概要 |
クラゲはその刺胞という毒を持つ小器官により、相手を攻撃する。近年、大量発生が問題となっているエチゼンクラゲであるが、その駆除時に漁業者が刺傷被害をうけていることが報告されている。しかし、現在までにエチゼンクラゲ刺傷原因毒素の詳細についてほとんど明らかになっていない。そこで、本年は将来的にエチゼンクラゲ刺症に対する特異的な治療方法を確立するため、エチゼンクラゲの刺胞がもつ毒素の作用と化学的性質を明らかにすることを目的とした。エチゼンクラゲの触手から刺胞を単離し、Mini-beadbeaterを用いて刺胞内液を抽出した。その抽出液を硫安分画およびイオン交換クロマトグラフィー(Toyopearl DEAE-650S)に供し、甲殻類致死ならびに麻痺活性を指標に有毒成分の精製を行った。また、刺胞内抽出液のプロテアーゼ活性について検討した。さらに、各精製段階において有毒成分の活性を保持する方法についても検討を行った。エチゼンクラゲの刺胞抽出液から甲殻類致死ならびに麻痺活性を指標として精製操作を行ったところ活性本体は陰イオン交換体に吸着することから酸性タンパク質であることが判明した。HPLCにおける麻痺活性物質の分離状況から、活性成分は少なくとも3つ以上存在することが示された。また、刺胞内抽出液はプロテアーゼ活性を持たないことが判明した。しかし、HPLCによる精製後の有毒成分は極めて短時間のうちに活性を消失することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エチゼンクラゲについては、冷凍サンプルからのその刺胞の単離法を確立することに成功した。これにより、エチゼンクラゲ刺胞のもつ毒素の研究に取り掛かることが可能となった。そして、単離した刺胞からの毒素の抽出、精製を行った。概要にも記したように、エチゼンクラゲの毒素は酸性タンパク質が活性本体であることが明らかにされた。また、エチゼンクラゲ毒素は、粗毒溶液においても甲殻類に対して麻痺を引き起こすこと、細胞毒性ならびに溶血活性を示さないことが示された。これは、以前に性状解明に成功しているいくつかのクラゲ類の毒素とは異なる生理活性を有していることが判明した。また、エチゼンクラゲの刺胞由来粗毒溶液中には最低でも3種類以上の有毒成分が存在することも明らかにされた。このように、今まで未知であったエチゼンクラゲのもつ有毒成分について一定の理解ができるだけの情報を本研究により引き出すことができた。これは、今後エチゼンクラゲ毒素解明の大きな下地になると考えられる。これらのことより、現在までの本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
各種刺胞動物からの刺胞の単離を行っていく。さらに、その単離した刺胞内から有毒成分を含む各種化合物についてそれらの性状解明を行っていく。現在の研究対象生物は、今回の研究でも記したエチゼンクラゲ、またヒトに対して極めて激しい刺傷を引き起こすことで知られるハブクラゲ、ウンバチイソギンチャクなどの刺胞動物である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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