研究課題
クラゲ類の持つ刺胞毒については、これらの毒素のほとんどが分子量1万以上の大きなタンパク質毒素であることが示されている。ところで、クラゲ類の持つ分子量数千以下のペプチド毒素については、その存在自体は近年報告されているものの、毒素本体が単離、構造決定された例は未だない。そこで今回、クラゲ刺胞由来の分子量数千以下のペプチド毒素について単離ならびにその構造解明を目的とした。研究対象としたクラゲは、我が国においてもっとも激しい刺傷事例で知られるハブクラゲChironex yamaguchiiである。2012年8月に沖縄県にてハブクラゲの触手(約700 g)を採集し、採集後すぐに1.5リットルの100%エタノールに浸した後、-30℃で保存した。今回採用したエタノール浸漬法は、刺胞内のペプチド毒素を効率よく抽出できることが判明した。エタノール抽出物をフィルターろ過したものを粗抽出液とした。甲殻類であるスジエビに対する致死ならびに麻痺活性を化合物単離の指標とした。エタノール溜去後、残渣を0.15 M NaCl-0.01 Mリン酸緩衝液(pH 7.0)で再溶解させてスジエビ毒性試験を行ったところ、全粗抽出液中に15,000 U(1Uは3匹中2匹以上が麻痺と定義)の毒性が確認された。濃縮した粗抽出液の一部をTSKgel ODS-120Tカラムを用いた逆相HPLCに供し、アセトニトリルの直線的濃度勾配法により毒成分を溶出・分画した結果、一つの画分から1,050 U /2 mlのスジエビ麻痺活性が確認された。そこで、同カラムにて本画分について再度単離・精製操作を行った。その結果、ペプチド毒素の単離に成功した。
2: おおむね順調に進展している
生理活性物質を単離するために欠かせない生物試料の大量採集に成功した。今まで、その存在が報告されていなかったハブクラゲ刺胞中からペプチド毒素の存在を見出し、その単離に成功した。以上の理由から、順調に進展していると判断した。
ハブクラゲ刺胞から単離されたペプチド毒素の構造解明に向けて進めていく。また、ハブクラゲ刺胞中には未知の数多くの生理活性物質の存在が明らかになってきた。これらについても単離ならびにそれらの性状解明を目指していく。
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