研究課題/領域番号 |
24510298
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
平賀 良知 広島工業大学, その他部局等, 教授 (10238347)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 赤潮プランクトン / ヘテロカプサ / 構造解析 / 構造活性相関 |
研究概要 |
新種渦鞭毛藻,ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ (Heterocapsa circularisquama)(以下,ヘテロカプサ)に含まれるカキや真珠貝などの二枚貝に対して毒性を示す物質の構造解析と活性相関を実施した。今年度は,研究進捗に最も関わるヘテロカプサの培養法の検討とヘテロカプサが産生する毒性物質の単離法検討と機器分析による構造解析を実施した。 ①ヘテロカプサは,栄養分を添加した天然海水を用いて培養することによって供給している。しかし,培養による季節的な生育量の変動が認めら,毒性物質の供給量に支障をきたしていた。そこで,必須栄養分であるリン,カリウム,窒素源の添加量とヘテロカプサ生育量の季節変動の解析を実施した。必須栄養源の添加量とヘテロカプサ生育速度には,明瞭な相関関係は認められなかったが,人工気象化下にも関わらず,夏季と冬季の差が認められた。さらなる培養条件の検討を行なっている。 ②ヘテロカプサ藻体からの目的の毒性物質の精製は,主に,ゲルろ過と逆相シリカゲルクロマトグラフィーを組み合わせることによって行なってきた。しかしながら,毒性物質が極微量成分であることから,より効率的な精製法の確立は,毒性物質の構造解析ならびに生物活性の解明のため急務であった。そこで,抽出や精製に用いる溶媒の検討を行った。その結果,毒性物質は多くの水酸基を有した高極性化合物で有るにも関わらず,アセトンやアセトニトリルに対して可溶でないことを見出した。今後,分離溶媒を組み合わせることによって,より効率的な精製法を検討する。 ③ヘテロカプサが産生する毒性物質のうち,これまでに見出している分子量約2,000の化合物HTX-Bについては,NMRおよびMSによる解析を実施した。現在,その解析を行うとともに,さらなる化学的解裂反応を行うために,培養による必要な量の確保に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由として,天然海水を用いて培養しているヘテロカプサ藻体量の確保とヘテロカプサが産生する毒性物質の産生量の変動が大きいためである。特に,微量成分である分子量約2000の毒性物質に関しては,その産生量と単離量が変動している。そのため,構造解析実験に必要な量の確保に時間が掛かっているためである。現在,これまでの単離・精製法を見直しており,より効率的な精製法と濃縮法の確立を目指してる。
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今後の研究の推進方策 |
①ヘテロカプサが産生する毒性物質の構造解析と生物活性を行うため,特に問題となるヘテロカプサの培養法の確立と毒性物質の単離・精製による量の確保について,引き続き検討を行う。昨年度,明らかとなった毒性物質の有機溶媒への溶解性の違いを利用した溶媒分画を組み込んだ分離法を確立することが,本年度の研究推進に当たっての一番の課題である。さらに,次に,昨年度導入したPDA検出器を利用した高速液体クロマトグラフを用いた効率的な効率的な精製を実施する。 ②機器分析による毒性物質の構造解明を実施する。これまで明らかにしている化合物の性質から,水酸基が結合した炭素骨格部分は,機器分析による構造解析から解明しているが,単純なアルキル鎖部分の構造解析はほとんど進んでいなかった。そこで,分子中の数少ない二重結合を利用した化学的な分解実験を行い,その分解物を効率的に分離・回収する方法について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
①ヘテロカプサの産生する毒性物質を効率的に濃縮・回収する目的で,化学的に修飾した分離用担体を用いた精製法の確立を目指す。そのために,様々な分離用担体の調達ならびに分離溶媒の購入する。 ②ヘテロカプサが産生する毒性物質の構造解析を実施する上で,解析が進んでいないアルキル鎖部分の構造解析のため,特異的に反応する反応試薬の調達ならびに反応溶媒,分離溶媒,分離用カラム,実験器具の調達に使用する。
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