研究課題/領域番号 |
24510298
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
平賀 良知 広島工業大学, その他部局等, 教授 (10238347)
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キーワード | 赤潮プランクトン / ヘテロカプサ / 構造解析 / 構造活性相関 / 機器分析 |
研究概要 |
広島湾など日本近海で発生する赤潮プランクトン,ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ(以下,ヘテロカプサ)に含まれるカキなどの二枚貝に対する毒性物質の構造決定と構造活性相関を実施するため,ヘテロカプサ藻体からの毒性物質の単離ならびに,機器分析による構造解析を実施した。 ①ヘテロカプサは,天然海水にリン,カリウム,窒素源を添加し,通気培養により,約2週間培養した。前年度に引き続き,様々な添加量の相関を実施したが,明瞭な相関は認められなかった。今後,明時間と暗時間の割合を変化した培養条件の検討を実施する予定である。 ②ヘテロカプサ藻体からの毒性物質の抽出と精製を実施した。これまでに,毒性物質は,ヘテロカプサ藻体のブタノール抽出物のヘキサン-メタノール分配によってメタノール可溶性画分に移行することが明らかとなっているため,メタノール可溶性画分の逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーならびにゲルろ過カラムクロマトグラフィーを実施した。その結果,分子量約5,000の毒性物質(HTX-A)に関しては,効率よく回収できることができた。一方で,HTX-Aと非常によく似た核磁気共鳴スペクトルを与える分子量約2,000の毒性物質(HTX-B)については,溶出画分が一定せず,回収率が非常に悪い結果を与えた。今後,HTX-Bを効率よく回収するための精製法を検討する予定である。 ③ヘテロカプサが産生するHTX-Aについては,各種核磁気共鳴スペクトルを測定した。現在,解析を実施している。今後,HTX-Aのオゾン分解,過ヨウ素酸分解など,二重結合やジオールといった官能基に特有の分解反応を実施し,さらなる解析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
その理由として,天然海水を用いたヘテロカプサ培養による藻体量の確保とヘテロカプサが産生する毒性物質の産生量の変動が大きいためである。特に,天然海水は,採水時期によって培養効率が異なり,一定の培養結果を与えないことは,実験効率を妨げる一因である。一方で,ヘテロカプサが産生する毒性物質は,分子量約5,000の毒性物質は安定的に単離・精製できるようになった。しかし,分子量約2,000の毒性物質は,微量成分であるが故に精製が困難である。今後,この微量成分の回収率の向上を目標として,精製工程の見直しを実施する。
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今後の研究の推進方策 |
①ヘテロカプサが産生する毒性物質のうち,分子量約5,000の毒性物質,HTX-Aについては,精製工程が確立できている。したがって,ヘテロカプサの培養とHTX-Aの単離・精製によって,構造解析のための必要量の確保ならびに,分解実験による分解生成物の構造解析を実施する。 ②微量成分である分子量約2,000の毒性物質,HTX-Bは,HTX-Aの構造類似体であるため,HTX-Aの構造決定を行うために必須である。しかしながらHTX-Bの回収率が悪いため,抽出・単離・精製の工程において,回収されないこともあるので,この工程を見直しを実施する。特に,逆相クロマトグラフィーにおいて,HTX-Bを効率よく回収する溶媒条件の検討や用いるカラム担体の検討を実施する。
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