広島湾で採取されたHeterocapsa circularisquama(ヘテロカプサ)が産生する二枚貝に対して特異的に致死活性を示す毒性物質の単離・構造解明およびその毒性物質の作用因子について探求を実施した。 ①ヘテロカプサが産生する毒性物質は,水酸基を数多くもつ構造である。そのため,純粋にする作業を実施した。逆相シリカゲルによる高速液体クロマトグラフのスペクトルを指標に,ゲルろ過カラムクロマトグラフによる精製,イオン交換樹脂による精製,アフィニティカラムクロマトグラフを用いた精製を順次行うことによって,より純粋な化合物の取得を行った。構造解析は,水酸基を数多く持つこと,溶解する溶媒が水かアルコールに限定されていたことから,アルコール溶媒中での分解実験による小分子への誘導を実施した。これまでに,オゾン酸化による分解反応および過ヨウ素酸酸化による分解実験を実施した。数多くの生成物がそれぞれの反応によって得られたため,種々の担体を用いた高速液体クロマトグラフによる分離・精製を試みた。いずれも,核磁気共鳴スペクトルによる解析,質量分析計による分子量解析を現在実施しており,さらなる構造解析を検討している。今後,それぞれの小分子がどのような組み合わせで結合しているかの詳細を検討し,毒性物質の真の構造解析を完了したい。 ②ヘテロカプサが産生する不飽和脂肪酸について,構成成分を調査した。ヘテロカプサ藻体より抽出した脂肪酸をメチルエステルに誘導した後,ガスクロマトグラフによる成分分析を行った。その結果,不飽和脂肪酸としてC18:2,C18:4,C22:6を主要成分としていること,飽和脂肪酸としてC14:0,C16:0が主要成分であることを見出した。さらに,超長鎖脂肪酸として,C26:0をわずかに含むことを見出した。超長鎖脂肪酸については,ほとんど報告例が無いため,更なる調査を行っている。
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