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2014 年度 実施状況報告書

細胞増殖のシグナル伝達に関わるNADPHオキシダーゼ1の活性制御と情報伝達機構

研究課題

研究課題/領域番号 24510299
研究機関愛媛大学

研究代表者

田村 実  愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (00128349)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードsuperoxide / Nox1 / beta Pix / signal transduction / oxidative stress / apoptosis / nanodevice / Caco-2
研究実績の概要

1.ヒト大腸癌細胞Caco-2にbetaPix遺伝子を導入し、内在性Nox1によるスーパーオキシド生成が亢進することを見いだした。このことはbetaPixによりNox1の必須因子Racが活性化されたことを示唆するが、Racの活性化とbetaPixへの結合能の検討から実際にこのことが確認された。betaPixは上流からの情報の中継点にあり、この酵素自身の調節も注目されるが、我々はリン酸化がその機構であることを見いだした。興味深いことにリン酸化の位置によってbetaPixは正の方向にも負の方向にも調節されるのであった。またその調節に伴い、betaPixのRac結合能が変化することも見いだした。
2.betaPixの各ドメインの働きを知るために、各種の短縮型betaPixを組み換えタンパク質として調製し、Rac結合活性とGEF活性(GDP-GTP交換活性)を調べた。これにより、Rac結合領域、GEF活性領域を浮き彫りにすることができた。
3.Nox精製の試み Nox1/Nox2が共通にもつサブユニットp22の抗体を用いてNox (今回はNox2)の精製を試みた。好中球の膜を可溶化したものを抗体を結合した磁気ビーズに吸着させた。p22抗原ペプチドによる溶出でp22が得られたが、p22と会合しているはずのNox2は残念ながら回収されなかった。今後可溶化の条件をていねいに検討してp22とNox2の複合体を分離したい。
4.Noxの発生したスーパーオキサイドがどのように細胞に情報伝達するかを見るために、このたび我々が開発したスーパーオキシド発生ナノデバイスを用いて、ヒト培養細胞Caco-2に対する影響を見た。4時間の作用で細胞は明らかにアポトーシスの兆候を示した。すなわち、Caspase-3の活性化およびホスファチジルセリンの細胞外への露出が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

スーパーオキシド生成型酵素 NADPH oxidase1 (Nox1) の活性化について、活性化因子Racの上流の制御因子としてbetaPixをつきとめることができた。さらにその活性がリン酸化の部位により正負両方向に制御されうることを見いだした。
また細胞に対するスーパーオキサイドの影響を調べ、これがシグナルの元になって細胞にアポトーシスを引き起こすことを見いだした。さらにこのシグナルがスーパーオキシドから派生する過酸化水素であることを明らかにした。
これらの知見を確実なものにするための検証実験を重ね、最終的に論文にまとめて、国際誌に3報の英語論文を出版することができた。

今後の研究の推進方策

1.betaPixは、Racを介してNox1活性化だけでなく、それ以外の細胞応答も引き起こす。このスイッチングがどのように行われるのかをリン酸化部位とタンパク質間相互作用の面から追究したい。
2.細胞に対するスーパーオキシドの作用について、アポトーシスのほかに増殖や細胞の変形・運動などにおいてどのような役割があるのか、ナノデバイスを用いスーパーオキシドの濃度を変化させて検討する。また細胞膜タンパク質のカルボニル化や脂質の過酸化などについても検討する。
3.さらに、スーパーオキシドが、シグナル分子である過酸化水素の前駆体としての役割以外に、何か役割をもたないかどうかについても検討したい。

次年度使用額が生じた理由

昨年は、建物の耐震工事とそれに伴う実験室の引っ越しがあり、2ヶ月以上にわたって実験が満足にできなかった。このため予算の執行が遅れ、一部の予算を次年度に繰り越すことになった。

次年度使用額の使用計画

細胞培養のための培地、細胞実験に必要なケイ光試薬、また組換タンパク質の精製に必要なアフィニティー樹脂などの購入に充てる。またタンパク質相互作用の検討のためのプルダウンアッセイの標的タンパク質の検出に用いる抗体の購入に充てる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] An improved superoxide-generating nanodevice for oxidative stress studies in cultured cells2015

    • 著者名/発表者名
      Tamura M, Kunihiro S, Hamashima Y, Yoshioka Y, Tone S, Kameda K
    • 雑誌名

      Biotechnology Reports

      巻: 6 ページ: 45-50

    • DOI

      10.1016/j.btre.2015.02.003

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Induction of apoptosis in Caco-2 cells by exogenously added O2- production by a nano device2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshioka Y, Fujibayashi H, Kameda K, Kan Daijiro, Tone S, Tamura M,
    • 雑誌名

      Experimental Cell Research

      巻: 331 ページ: 408-415

    • DOI

      10.1016/j.yexcr.2014.12.007

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Nox1 activation by betaPix and the role of Ser-340 phosphorylation2014

    • 著者名/発表者名
      Kaito Y, Kataoka R, Takechi K, Mihara T, Tamura M
    • 雑誌名

      FEBS Letters

      巻: 588 ページ: 1997-2002

    • DOI

      10.1016/j.febslet.2014.04.025

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 細胞外から加えたO2-により誘導されるCaco-2の細胞死2014

    • 著者名/発表者名
      吉岡佑樹、藤林弘之輔、亀田健治、刀禰重信、田村 実
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜国際展示場
    • 年月日
      2014-12-17
  • [学会発表] betaPix によるNox1の活性化とSer-340リン酸化の役割2014

    • 著者名/発表者名
      三原達也、階戸悠貴、片岡良介、武智健斗、田村 実
    • 学会等名
      日本生化学会中国四国支部会
    • 発表場所
      愛媛大学南加ホール
    • 年月日
      2014-06-06
  • [学会発表] 細胞外から加えたO2-により誘導されるCaco-2の細胞死2014

    • 著者名/発表者名
      藤林弘之輔、吉岡佑樹、亀田健治、刀禰重信、田村 実
    • 学会等名
      日本生化学会中国四国支部会
    • 発表場所
      愛媛大学南加ホール
    • 年月日
      2014-06-06
  • [備考] 分子生命化学

    • URL

      http://www.ach.ehime-u.ac.jp/biotec/

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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