研究課題/領域番号 |
24510301
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 寛 九州工業大学, 情報工学研究院, 教授 (70309748)
|
研究分担者 |
安永 卓生 九州工業大学, 情報工学研究院, 教授 (60251394)
小松 英幸 九州工業大学, 情報工学研究院, 助教 (90253567)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ヘム / ヘムオキシゲナーゼ / シトクロムP450還元酵素 / 蛋白質間相互作用 / 触媒機構 |
研究概要 |
1.ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)のヘム結合のカロリメトリー解析 親和性の弱い、鉄配位子His25変異体H25Aを利用して置換過程(H25A・ヘム + HO → HO・ヘム + H25A)のITCを行なった。また、ヘムのプロピオニル基と相互作用するLys179とArg183の変異体(K179A,R183A,K179A/R183A)の置換ITCも実施した。その結果、野生型に比べ、H25Aの親和性は大きく減少したが、Lys179とArg183の変異体では親和性の減少は小さかった。HOのヘム結合のエネルギーは,His25-Fe3+間配位結合が主であり、静電相互作用は補助的である。また、野生型のヘム結合はエンタルピー駆動であり、疎水相互作用はほとんど起こっていない。全ての変異型でエントロピー変化が増加したことから、野生型ではヘムが無秩序なエントロピー駆動型疎水相互作用をしないよう制御されていると思われる。 2.HO-2とシトクロムP450還元酵素(CPR)との表面プラズモン共鳴(SPR)による相互作用解析 ラットHO-2のN末端伸長配列を削除した変異体(ΔN)、およびCPRとの結合に重要と見られる塩基性残基をAlaに置換した変異体(K168A、R172A、R203A)を作製し、ラットCPRとの相互作用を解析し、ヘムおよびNADP(H)が両酵素の相互作用に与える影響を検討した。その結果、ΔNは野生型(WT)に比べ、holo型で親和力が低下し、apo型では結合がみられなくなった。次に、NADP+添加実験から、WTと同様にCPRとの親和力の増強が確認された。HO-2はHO-1と異なり、N末端伸長配列でもCPRと相互作用しており、この配列がapo型におけるCPRとの結合に関与していると示唆された。また、3つのAla置換体では、WTに比べholo型とapo型とも親和力の低下が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、「I.基質ヘムとHOとの結合をカロリメトリー解析し、その熱力学的パラメータを求める」、「II.HOによるヘム分解反応の中間過程を明らかにする」、「III.HOを含むヘム分解系酵素間の相互作用ネットワークを明らかにする」の3つを研究目的として挙げている。このうち、Iについては、【研究業績の概要】の1.に記載した通り、置換ITC法によって、WTのヘム親和性(Kd値)を精確に測定することができた。これにより、ギブスエネルギー変化(親和性)の他、エンタルピー変化とエントロピー変化を算出することが可能となり、ヘムとタンパク質の結合に対する配位結合,静電相互作用,疎水相互作用の寄与を議論できたことは画期的な成果である。また、IIについても、HO-2のN末端伸長配列のCPR相互作用への寄与とともに、HO-1と同様な内部残基による静電的相互作用の重要性も確認でき、HO-2が弱いながらも常にCPRと結合していることが示唆された。このことは、構成型アイソザイムとして、定常的なCO発生に関与しているのではないかというHO-2の生理的役割を裏付ける実験的事実として意義深い。これらの成果について、関連学会で研究発表を行ったところ、当該分野の研究者から良好な反応を得た。現在は学術雑誌への論文投稿に向けて、原稿を準備中である。また、この他の研究項目についても順調に研究成果を得ており、平成24年度には、計7件の学会発表を行い、2報の研究論文を発表し、1件の特許申請をおこなった。以上の成果に基づき自己点検を行い、本課題研究を上記のように評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.HOとヘムとの結合様式の解明(坂本・小松):平成24年度に記載した実験を引き続き行う。計画の一部に着手しており、既に成果も得られていることから、大幅な計画の変更はないと考えられる。 2.HRMとヘムとの相互作用の検討(坂本):HO-2配列上にみられるHRM(Cys-Pro)を含む領域のペプチド(約30残基)およびそのアナログをFmoc固相合成法を使って合成し、ヘムとの相互作用を紫外可視分光吸収および円二色性(CD)スペクトルの変化を解析する。また、滴定型カロリメトリー測定によって熱力学的にも解析する。さらに、HRM配列を改変したペプチドアナローグを合成し、活性に重要なアミノ酸残基の同定を行う。 3.HO-1/CPR複合体のクライオ電子顕微鏡による解析(坂本・安永):投影角決定の際使用したモデルの影響を低減させるため、3次元像の精密化作業を行う。また、電子顕微鏡画像を追加し、3次元像の分解能を上げ、より詳細なHO-1・CPR複合体モデルの構築を目指す。さらに、GSTによる二量体化の影響をなくすため、HO-1とCPRのみから成る複合体の調製を行う。 4.ベルドヘム/ビリベルジン変換(第3ステップ)の検討(坂本・野口):この開環反応のメカニズムを探るひとつの有力なアプローチは,HO-1・ベルドヘム結合体およびそのCO,NO結合体の結晶構造を解くことである。このことによって,ベルドヘムに近接しているアミノ酸残基と水分子を含んだ水素結合ネットワ-クに関する知見が得られるので,ベルドヘム開環反応の反応機構を推定する有力な手がかりとなる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|