研究課題/領域番号 |
24510301
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 寛 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70309748)
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研究分担者 |
安永 卓生 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60251394)
小松 英幸 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (90253567)
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キーワード | ヘム / ヘムオキシゲナーゼ / シトクロムP450還元酵素 / タンパク質間相互作用 / カロリメトリー / 触媒機構 |
研究概要 |
1.ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)のヘム結合のカロリメトリー解析:直接および間接滴定法を用いて、HO-1野生型および変異体すべての解析を完了した。K18Aは野生型に比べ親和性と熱力学パラメータ共に変化が無かった。K179A,R183A,K179A/R183Aでは、エンタルピー減少がエントロピー増加で補償され、野生型に比べ親和性の減少はわずかであった。一方、K18A/K179A/R183Aでは大きく親和性が減少し、alpha選択性が失われていた。つまり、Lys18は野生型では結合に関与していないが、Lys179とArg183の変異をレスキューするという興味深い結果が得られた。また、酵素活性を測定したところ、K18A以外の変異体に活性の低下が見られた。 2.HO-2とシトクロムP450還元酵素(CPR)との表面プラズモン共鳴(SPR)による相互作用解析:ヘム分解産物ビリベルジン(BV)とHO-2の複合体を作製し、CPRとの相互作用解析を行ったところ、BV-HO-2複合体はCPRとの結合を示さなかった。このことから、BVによるapo型HO-2の相互作用解析への影響はなく、apo型 HO-2におけるCPR結合能がサポートされた。また、BV結合により、HO-2で微小なコンホメーション変化が起こり、CPRに結合できなくなったと考えられる。 3.HO-2のヘム調節モチーフ(HRM)とヘム結合性の検討:2つのHRMを含む配列に対応する長鎖ペプチドアナログとHRMを一つずつ含む短鎖ペプチドアナログを合成し、滴定実験によってヘムとの結合親和性を検討したところ、2つのHRMのヘム親和性は異なり、Pro残基を置換するといずれも親和性が低下することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、「I.基質ヘムとHOとの結合をカロリメトリー解析し、その熱力学的パラメータを求める」、「II.HOによるヘム分解反応の中間過程を明らかにする」、「III.HOを含むヘム分解系酵素間の相互作用ネットワークを明らかにする」の3つを研究目的として挙げている。このうち、Iについては、これまで蛋白質とヘムとの相互作用について熱力学的パラメーターを用いて詳細に記述した例はほとんどなく、本研究で配位結合,静電相互作用,疎水相互作用の寄与を議論できたことの意義は大きい。また、【研究業績の概要】に記載した通り、予想していなかった興味深い結果も得られた。当初予定していた実験はほぼ終了し、現在論文執筆中である。 その他の項目についても順調にすすんでおり、その成果として、計5件の研究発表を行い、1報の研究論文を発表した。特にHO-2とCPRの相互作用のSPR解析は実験を終了し、現在投稿論文執筆中である。 以上の成果に基づき自己点検を行い、本課題研究を上記のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き計画に従って実験を行う。
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