研究実績の概要 |
自切誘起因子APFを用いて、ヒトデの ‘slow autotomy’ のCICR以降のカスケード、ガングリオシドが関わる分子機構、ネクロトーシス機構と自切との関わりについて解明する。 ニコチンアミドの自切への関与を検討した際に、SIRT1阻害により影響が関わる可能性が生じたことから、SIRT1活性の一つであるヒストン脱アセチラーゼ(HDAC)活性Type III (NAD依存性) の阻害剤を用いたところ、自切までの時間が短縮された。他のType I, II HDACは抑制しても影響がみられなかったことから、NAD代謝系に関与するこの経路が自切に影響すると思われる。 自切経路の検討を行ったところATP量の減少、PARPの抑制、生体内酸化機構などが自切に関与することが分かったので、ネクロトーシスの関与を検討するために、阻害剤ネクロスタチンを用いたところ、自切時間が短縮する傾向が見られた。この結果は当初の予想と異なっていたため、関連する経路の関与を今後検討する必要性が生じた。 自切後のヒトデの一部を継続して飼育したところ、腕が切れた部分の傷がふさがった後に再生が始まるが、この傷がふさがるまでの期間が ‘slow autotomy’ の場合と比べて長くなることが分かった。神経変性保護作用を持つ化合物はいずれも自切した腕の傷がふさがる期間が長いことから、何らかの再生への機構を抑制している可能性が示唆された。
|