研究課題/領域番号 |
24510304
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 雄広 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50383774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / メチル化 / 含硫アミノ酸代謝 |
研究概要 |
今年度は含硫アミノ酸代謝変動に伴うミトコンドリア分裂因子Drp1のメチル化修飾がミトコンドリアの形態にどのように影響を与え、その結果、細胞増殖・細胞死、ストレス応答、代謝制御などの細胞機能をどのように制御するかを理解するため、以下の基礎的実験を行った。 (1)Drp1、Gferのメチル化部位の検討 1次構造から、Drp1にはRXRからなるアルギニンメチル化酵素(PRMT)による認識サイトが2か所存在していた。in vitro methylation法より、Drp1はPRMT1によってメチル化されることが分かったが、その修飾効率が悪いことが研究遂行上の問題であった。Drp1の翻訳後制御機構をさらに精査すると、Drp1のフォールディングに重要なタンパク質Gfer(growth factor, augmenter of liver regeneration)が高度にメチル化修飾を受けることを新たに見出した。リコンビナントタンパク質を用いたin vitroアッセイから、GferはPRMT1および3によってメチル化されており、RXRからなる繰り返し配列が6箇所存在し、それぞれに変異を導入することでおおよその修飾部位を同定することに成功した。 (2)二次元電気泳動によるDrp1の修飾動態の確認 Drp1はリン酸化、SUMO化、ニトロシル化等、複数の翻訳後修飾が多元的に制御されているユニークなタンパク質である。Drp1のそれぞれの翻訳後修飾動態を捉えるため、二次元電気泳動によってDrp1の翻訳後修飾による等電点のシフトを検討した。その結果、Drp1は約10個のスポットとして観察され、これらが異なる修飾動態を取っている可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、当初Drp1の直接のメチル化修飾部位を同定することを試みていたが、in vitro系において再現性はあるものの、検出されるシグナルが微弱であり、その後の解析が困難であった。そこでDrp1の活性制御系について精査したところ、Drp1のジスルフィド結合に作用し、そのオリゴマー化に寄与するシャペロンタンパクGferもまた、メチル化修飾を受けることが明らかになった。Gferは約23kDaの比較的小さなタンパク質であるが推定メチル化モチーフRXR配列が6箇所あり、PRMT1および3と異なるメチル化酵素によって、異なるアルギニン残基が修飾されることが明らかとなった。また、Gferは細胞抽出液を分画して行ったWestern blot.では膜画分(ミトコンドリア、ER膜を含む)においてrichに存在しており、おそらくはそれらの膜上でGferによるDrp1の活性制御が行われているものと考えられる。これらの実験結果から、Drp1自体のメチル化部位には迫れなかったものの、Drp1の活性調節分子Gferの修飾動態および修飾部位の解析に目途がついたことでジスルフィド結合とメチル化修飾とのリンク、硫黄代謝のミトコンドリア形態制御への寄与など、当初は考慮していなかったきわめて重要なDrp1の活性制御の可能性が示唆され、メチル化認識抗体の作製は次年度にずれ込んだもののプロジェクトの進行具合としてはおおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度作成予定であった、抗メチル化Drp1抗体は抗原をGfer(Drp1のジスルフィド結合を制御しているシャペロンタンパク質)に変更して、翌年度(平成25年度)に作製することとした。この抗メチル化抗体を用いることでGferのメチル化制御がDrp1の翻訳後修飾動態にどのように影響を与えるかを検討する。Gferの作用機序としてはDrp1のジスルフィド結合の調節を介したDrp1のオリゴマー化が推定されることから、これらの分子機構を生化学的手法を駆使して解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度(平成24年度)に計上していた抗メチル化抗体の作製(500,000円分)は作成する抗原、およびその修飾部位の検討に時間を要したため、平成25年度に作成することとした。またその他の未使用額の発生については効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品費に充当する予定である。
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