研究課題
本年度は、ミトコンドリア分裂因子Drp1内の翻訳後修飾がどのように制御されているか、また翻訳後修飾動態の違いがミトコンドリア形態にどのような変化をもたらすかを調べるために以下の基礎的実験を行ない、翌年度の研究に必要な実験系を構築した。(1) 昨年度後半から取り組んできた、Drp1のフォールディングに重要なタンパク質であるGfer(Growth factor, augmenter of liver regeneration)のメチル化部位の同定が完了した。10数種類のGfer変異体を用いたin vitro methylation解析からメチル化酵素PRMT1によって7番目のアルギニン残基がメチル修飾されることが分かった。この結果を基に、メチル化型Gferを特異的に認識する良好な抗体を作製した。(2) Gfer/Drp1系のメチル化修飾を通じた制御メカニズムを解析するためにアルギニンメチル化酵素およびメチオニン代謝を司る酵素に対するshRNA安定発現株を複数単離した。これらの細胞を用いた二次元電気泳動解析から翻訳後修飾の変化のに起因するDrp1のスポットのパターンの違いが認められたことから、Drp1の翻訳後修飾のパターンの変化にメチル化修飾が関与していることが明らかになった。
3: やや遅れている
当初の予定では平成25年度中に、メチル化修飾を介したDrp1の翻訳後修飾の違いに起因するミトコンドリアの形態変化やDrp1自身の局在・活性、多量体化にどのような影響を及ぼすかを検討する予定であったが、Drp1のジスルフィド結合に作用するシャペロンタンパク質Gferに対する抗体の作製(外部委託による作製)が遅れたため、これらの実験の多くは引き続き平成26年度も行うこととなり、計画としてはややスローペースとなっている。一方で、メチオニン代謝の制御、メチル化修飾の有無によるミトコンドリア形態の変化を追うために、アルギニンメチル化酵素PRMT1、PRMT3、およびメチオニン-システイン代謝酵素CBSに対するshRNA安定発現細胞株を今年度新たに作製した。来年度に向け、上記の実験に加えこれらの細胞を用いたミトコンドリアの形態評価系の準備が整った。
抗メチル化Gfer抗体の完成が当初見込んでいた時期よりもずれ込んだことにより、今年度予定していた実験の一部を来年度実施することになった。来年度は昨年度に引き続きメチル化修飾によるDrp1の局在および活性の変化を調べるとともに、メチオニン代謝制御、メチル化修飾の有無によるミトコンドリア形態の評価実験を行う。さらに、当初の予定通り、Drp1の修飾部位の変異体を細胞に導入してフラックスアナライザーを用いた細胞内代謝測定実験を行う。また、今年度に計上していた抗メチル化抗体作製に関する費用は当初50万円程度を見込んでいたが、価格交渉で35万円ほどに済んだため、予想以上の未使用額が生じた。これらは最終年度の消耗品費および化合物等の受託合成費に充当する予定である。
今年度は外部受託で作製を依頼していた抗メチル化型Gfer抗体の完成が12月下旬まで時間を要した関係で、今年度中に実施を予定していたDrp1のメチル化修飾によるリン酸化など、他の修飾動態への変化およびGTPase活性の変化の検討、さらにメチル化修飾によるミトコンドリア形態の違いを観察する実験の実施が次年度にずれ込んだ。よって、止むを得ず当初見込んでいた研究遂行に関わる消耗品費等の使用を次年度に持ち越すこととした。持ち越した分の助成金は最終年度請求の助成金と合わせ、Drp1の修飾動態の変化によるミトコンドリア形態の観察、およびDrp1自身の多量体動態およびGTPase活性の差異を調べる実験のための費用に、また当初の予定通り、Drp1の修飾動態を変化させた場合の細胞代謝機能測定のための消耗品費に主に使用する予定である。
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Nature Communications
巻: 5 ページ: 3480
10.1038/ncomms4480
Molecular Cancer Research
巻: 11 ページ: 973-985
10.1158/1541-7786.MCR-12-0669-T