研究課題/領域番号 |
24510306
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
齊藤 玉緒 上智大学, 理工学部, 准教授 (30281843)
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研究分担者 |
森田 直樹 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60371085)
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キーワード | 生理活性物質 / ポリケタイド |
研究概要 |
本研究の目的は、社会性昆虫などで見られる自分を犠牲にして仲間を助ける「利他行動」を、社会性アメーバである細胞性粘菌をモデルとして、この行動を制御する分子機構を理解することにある。 25年度は前年から引き続きpks2遺伝子の欠損株を用いた利他行動の制御機構を解析した。当初、利他行動の制御については1)細胞サイズの調整、2)発生のタイミング変更、3)細胞型比率の変更による異なる細胞型への再分化、の可能性を検討していた。24年度の変異株を使った実験結果から発生初期の細胞型の決定に何らかの異常が想定されたので、25年度はこの点について中心に解析を行った。25年度にはこれまで解析に適した細胞型マーカーがなかった予定柄の主要な部分のマーカーが開発され、これを入手することができたのでこのマーカーの発現パターンの詳細を検討した。その結果、遺伝子破壊株は予定柄細胞に分化した細胞が、その運命に従わず予定胞子になることによって柄細胞になることを回避することを示す結果が得られた。しかもその特徴は胞子細胞に分化しやすい条件であるバクテリアを餌にした場合に顕著であることが分かった。PKS2酵素の産物については25年度から来年度にかけて引き続き精製を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pks2遺伝子破壊株を用いた利他行動に関する観察では、利他行動は柄分化と密接な関係があることが分かった。柄細胞に分化するかのように振る舞っていた細胞が、発生のきわめて初期の段階で予定胞子に分化転換をするというモデルが考えられた。つまり一度柄細胞に分化する道を選択してもpks2に欠損があれば柄に分化せず胞子に分化転換することによって利他行動をとらなくなると考えられる。上記のモデルを導きだすことができたことは予想以上の進展であった。しかし、一方でPKS2酵素の産物の精製は今後の継続課題となっている。これはpks2遺伝子の発現量が低く産物が少ないことによると考えている。これを改善するため重金属などのストレスを与えてpks2遺伝子の発現量を増加させることができる条件を見つけ出すことができたので、この条件を用いて精製をすすめたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方としては、以下の2点を中心に研究を進める。 1)裏切り行動の多面的な角度からの検証 2)化学物質の精製 利他行動をさける裏切り行動については、それを示唆する定性的なデータにとどまっているが、利他行動と柄細胞分化を関連づける結果を得ることができた。今後はできるだけ実験結果を定量化できるようにするため、qRT-PCRを応用した方法を用いることを検討している。化学物質の同定の難しさは、化合物の量が予想以上に少ないことに起因している。これについては培養条件を変えることによって、遺伝子の発現量を上げることができたので、この方法に基づいて精製法を確立したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では2月ないしは3月に産総研に出張の予定で国内旅費を残しておきましたが、年度末で共同研究者との日程の調整がつかず、出張を断念せざるを得なかっため残金が発生しました。なお、研究討論については3月末の学会参加時に共同研究者が1日東京に出張してきた際に簡単な打ち合わせを行いました。 上記の理由で残額が生じました。年度末の学会参加時に簡単な打ち合わせができたので、本年度に国内旅費として使用する予定です。
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