これまでに、1.046-Eの標的分子の解明と卵菌類の生理・代謝系の解析として、(1)046-Eが他の卵菌Achlya rasemosa、Pytophthora infestansへ弱いものの活性を示すこと、(2)S.parasiticaへの影響として、胞子発芽抑制効果が顕著なこと、また、胞子核周辺の核膜上、あるいは核膜外近傍に046-Eが局在化していることを見出した。(3)046-E結合分子の検討では菌糸を用い、結合タンパク2種(18、12kDa付近)を単離し、両者ともにnucleoside diphosphate kinase Bであることが強く示唆された。2.生合成遺伝子の解析を含むミズカビ予防薬としての応用展開への基礎的データの取得として、(1)メダカ有精卵を用いた検討の結果、摂餌開始までの期間で稚魚への毒性は見られず、また、ミズカビの感染予防効果は低濃度で確認できた。(2)アングサイクリン系の化合物である046-Eの生合成遺伝子の全容を解明するために、046-E生産菌コスミドライブラリーを作製し、アングサイクリン系化合物の骨格形成に関わる環化酵素をコードする遺伝子を含むコスミドを取得した。次いで、取得したコスミドの塩基配列決定と解析を行った結果、046-Eの生合成に関与が考えられたアングサイクリンやデオキシ糖の生合成遺伝子を含む遺伝子クラスターの存在が明らかとなった。 そこで、本年度は046-Eの生合成遺伝子を含むと考えられるコスミドを放線菌Streptomyces lividansへ導入することで、046-Eが生産されるかどうかの検討を行った。コスミドを導入したS. lividansの培養液をHPLCとLC-MSで分析した結果、046-Eを生産していることが判明し、取得した遺伝子クラスターが046-Eの生合成遺伝子クラスターであることが明らかとなった。また、遺伝子の相同性をもとにした生合成遺伝子の全解析もほぼ終了している。
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