研究課題/領域番号 |
24510318
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研究機関 | 公益財団法人野口研究所 |
研究代表者 |
水野 真盛 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (40271506)
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研究分担者 |
藤田 雅也 公益財団法人野口研究所, その他部局等, 研究員 (20321672) [辞退]
川上 宏子 公益財団法人野口研究所, その他部局等, 研究員 (40320254)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオプローブ / 糖鎖 / フルオラス / 抗糖鎖抗体 / ファージディスプレイ / シルセスキオキサン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、糖鎖シルセスキオキサン型プローブを用いるハイスループットな抗糖鎖抗体スクリーニングシステムの構築である。本プローブは抗原部位の糖鎖と、クラスター化のコア部位となるシルセスキオキサン(以下POSS)、固定化部位のフルオラス基の3つの部位から成る有機・無機ハイブリッド型プローブである。特に抗原部位の糖鎖以外はバイオイナートなシルセスキオキサンとフルオラス基であることから抗原性を有さず、また非特異的な吸着が抑制できる。さらにプローブ中で糖鎖をクラスター化するため十分な強度の結合定数を有するようになるため、ファージディスプレイ法と組み合わせることで選択性の高い抗糖鎖抗体の迅速スクリーニングが可能となる。 25年度までにフルオラスタグ部位がPOSSブロックへHuisgen反応により導入できることが明らかとなった。また、糖鎖部位の導入はチオールのラジカル付加により導入できることが明らかとなった。しかしPOSSブロック上の7か所の反応点に対する糖鎖の導入効率は平均3~4ヶ所であり、7ヶ所すべてに導入できた完全導入体を得ることはできなかった。そこで26年度は糖鎖部位のPOSSブロック上の7ヶ所の反応点への完全導入の検討を行った。 具体的には、糖水酸基の保護基の種類、光反応の容器の材質の種類、反応光源の種類について、糖の導入率が最大になる条件についての検討を行った。その結果、糖水酸基は無保護の状態、反応容器の材質はPyrexガラス、反応光源は400W高圧水銀ランプの場合に平均6か所の糖の導入に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
26年度の計画は①フルオラスタグ含有糖鎖POSSプローブ、及び②フルオラス相互作用による糖鎖POSSプローブの固定化である。 ①では、25年度に糖鎖部位のPOSSプローブへの導入はチオールのラジカル付加により導入できることが明らかとなった。しかし導入率を測定したところ50%以下と低い値であった。種々検討の結果、糖水酸基の保護基の種類、リンカーの長さ、光源の種類等反応条件の組み合わせにより、チオールのラジカル付加による糖部位の導入効率が大きく変化することが明らかとなった。そこで、糖鎖導入の最適条件の探索を行うために種々の構造の糖鎖誘導体の合成を行った。その結果、糖水酸基には保護基を用いた場合はPOSS上への導入率が低くなるが、無保護の場合に導入率が向上することが明らかとなった。また反応容器の材質としては石英よりもPyrexガラスの方が導入率が向上することも明らかとなった。光源については100W低圧水銀ランプと400W高圧水銀ランプでは400Wが若干導入率が高くなる結果が得られた。 このように達成度が遅れている理由としては、計画①において糖鎖POSSプローブの合成検討を行ったため、さらにその検討のために4種類の糖鎖誘導体の合成を行ったためである。従って本年度の計画②の糖鎖POSSプローブの固定化については未着手である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は①糖鎖POSSプローブの供給、②フルオラス相互作用による糖鎖POSSプローブの固定化、③糖鎖POSSプローブ固定化デバイスの機能評価とファージディスプレイ法による抗糖鎖抗体スクリーニングシステムの構築を行う。 ①については26年度に合成ルートを確立した糖鎖POSSプローブを数百mg程度合成し、計画②と③で使用するために供給する。 ②についてはPTFE製プレートに①で合成した糖鎖POSSプローブをフルオラス相互作用で固定化する。本研究では固定化の溶媒、濃度、洗浄溶媒の種類について検討を行い、プローブの固定化量を測定する。固定化量の測定には酵素標識あるいは蛍光標識レクチンなどを用いる。もし、パーフルオロオクチル基では固定化が不十分、あるいは洗浄工程での剥離などの結果が得られた場合はパーフルオロオクチル基を複数本有する糖鎖POSSプローブを合成し、固定化の検討を行う。 ③の機能評価については、(1)固定化基材、及びプローブへの非特異的吸着の検討と、(2)レクチンを用いたタンパク質―糖鎖間相互作用の検討、を行う。(1)ではPTFE製プレートに糖鎖POSSプローブを固定化したデバイスが、既存のポリスチレンプレート等と比較して非特異的吸着に対して優位性があるかどうかの検討を行う。(2)ではレクチンとしてラクトース認識レクチンであるpeanut agglutinin (PNA)のHRP標識体を用い、ELYSA法で相互作用の検討を行う。(1)と(2)より得られた知見を基に、ファージディスプレイ法による抗糖鎖抗体スクリーニングシステムの構築も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に計画していた「糖鎖POSSプローブの固定化」が未着手となったため、固定化の際に使用するPTFEプレートや固定化試薬、レクチン等の試薬類を購入しなかったため。また予定していた国際学会での発表を行わなかったため残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は、研究遂行のために試薬類や器具類、論文投稿等の消耗品費としての使用を計画している。
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