研究課題/領域番号 |
24510324
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
西川 潮 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (00391136)
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研究分担者 |
小泉 逸郎 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (50572799)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子多型 / 形態多型 / 行動多型 / 外来ザリガニ / アメリカ合州国 |
研究概要 |
1.分子遺伝マーカーの開発 外来種シグナルザリガニ(Pacifastacus leniusculus)の表現型と遺伝的多様性の関係を明らかにするため,外部委託により,次世代シーケンサー(454、Roche社)を用いて10遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを新規に開発した。これまで共同研究者らにより5遺伝子座のマーカーが開発されていたが(Azuma et al. 2011)、詳細な多型解析には数が少なく、増幅効率が低いものもあった。その結果,主にTATGなど4塩基を繰り返し配列とする10のマイクロサテライト遺伝子座が決定された。フラグメントサイズは100-300bp、対立遺伝子座数は10-15程度であり、本研究目的の多型解析には適切だと考えられた。しかし、そのプライマーを用いて我々が解析を行ったところ、遺伝子はほとんど増幅されなかった。現在、PCR条件などを詳細に検討している。 2.外部形態の計測 シグナルザリガニの日本への侵入に伴う形態変異を明らかにすることを目的として,これまでに測定した標本(計155個体)に加え,新たに侵入域(日本)の17集団331個体,および在来域(北米)の7集団80個体の雄のザリガニ標本29部位(Larson et al. 2012)の外部形態を測定した。 日本では摩周湖由来の北海道集団が過去数十年の間に急速に分布を拡大しているが,侵入年代の新しい集団ほど鉗脚(鉗脚面積/全長)が大きい傾向が認められた(rs=0.68, P<0.05)。しかし,鉗脚の大きさと16SrRNAの遺伝的多様度(遺伝子型数,h, π)との間には有意な正の相関は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.シグナルザリガニの10遺伝子座のマイクロサテライトマーカーが新規に開発できたのは大きな進展であった。しかし、そのマーカーを用いて我々自身でPCRを行ったところ、全てのマーカーで増幅が認められなかった。委託会社は、低コストで解析が可能なM13プライマーを用いてマーカー開発を行っていた。そのため、こちらも開発済みのマイクロサテライトマーカー(Azuma et al. 2011)にM13プライマーを装着し、同様の条件下で解析を行った。解析はマーカー開発を行ったのと同様に長野、滋賀、北海道(阿寒湖)のサンプルを用いた。その結果、我々が開発したマーカーでは遺伝子が増幅されたのに対し、委託したマーカーでは全く増幅されなかった。現在、委託会社に連絡を取って増幅しない原因を調べている。 2.形態計測に関しては当初の予定以上に解析が進んだ。一方で,場所の確保等の問題から,行動解析の予備実験に着手することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.分子遺伝マーカーの開発 シーケンス委託会社と連絡を取り合い、PCR条件などを決定する。最終的に、10個程度のマイクロサテライトマーカーが利用できれば本テーマに十分である。実験法が確立されれば、行動解析および形態解析といった個体レベルのデータと突き合わせ、遺伝的多様性と侵略性の関係を明らかにする。 2.形態計測,行動実験 初年度の成果により,日本の侵入集団は侵入年代が新しいほど,捕食者や競争者から身を守るために有効と思われる鉗脚が有意に大きいことが明らかとなった。鉗脚の大きさは攻撃行動の強さと相関していることが予想されるため,今後,共通の環境下での飼育実験を通じて,侵入集団の形態多型と行動多型の関係性を明らかにする。さらに,新たに開発されたマイクロサテライトマーカーの有効性が確認された際には,FST-PSTテストを用いて中立進化と適応進化の相対的重要性を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は複数の侵入集団を対象として,室内で行動実験と形態計測を行う。DNA実験においては、行動や形態の分析を行った約300個体分のマイクロサテライト領域を増幅し、遺伝的多様性を決定する。
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