研究課題/領域番号 |
24510325
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山根 京子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (00405359)
|
キーワード | 遺伝資源調査 / ワサビ / 保全 / 種間交雑 / 形態 |
研究概要 |
申請者はこれまで、日本におけるワサビ属植物の自生地を100箇所以上調査し、遺伝学的な研究を行い、絶滅したと考えられていたオオユリワサビが、日本各地に現在も自生していることを発見した。このことは、後に各地の植物愛好家や植物研究者からも報告されたが、日本全体の集団を把握している人間はいなかった。そのため、申請者は全国各地の集団を確認し、オオユリワサビの実態把握につとめた。その結果、典型的なオオユリワサビは、確かにユリワサビとワサビとは異なる分類群として認識すべきであるという結論を得つつある。しかしながら、葉緑体のSSR解析によると、これら3種は区別できず、地理的な類縁関係もみられず、相互交雑の可能性が考えられた。本研究の主目的は、ワサビの野生種との交雑による遺伝的な攪乱の実態を把握し、そのうえで保全策を策定することであった。葉緑体DNAの解析結果からだけみると、確かに交雑は起こっており、結果的に日本のワサビ属植物の個体群は、世界でも例をみない遺伝的に混沌とした状態にある可能性が高い。一方、申請者は、ワサビとユリワサビと、その後代の分離個体が同所的に自生する集団を高知県で確認している。本集団では、2006年に自生していたワサビ個体は消失し、多様な中間個体が残されていた。そして、中間体はオオユリワサビに酷似していた。今年度は、ワサビのゲノム解読を開始することができた。推定ゲノムサイズ1Gのうち、現在約3割の解読が完了している。本データを用いてDNAマーカーを作成し、より詳しく、交雑集団の集団遺伝学的な解析や、日本各地のワサビ、ユリワサビ、オオユリワサビの系統関係を明らかにし、交雑の実態をDNAレベルで明らかにしたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、調査地点の絞込みに関して、開花期が早く、一斉開花したため調査時期が各地で重なり、例年よりはるかに困難であった。実際、ワサビだけでなくサクラなどの他の種でも、2014年春の開花は例年よりもかなり早めだったようだ。そのため、開花期の形態調査が未完成の調査地があったため、今年度補充することになってしまった。今年度は順調にデータは得られているが、逆に昨年よりも日本海側のワサビ個体の開花が遅いため、これから着手することになる。さらに、ワサビは人工交配が非常に難しい植物であり、昨年度は何株も試みたが1個体も成功することができず、F1を得ることができなかった。そのため、今年度は、種子からの発芽実験を基礎からやりなおすことにした。ポンポン山の網掛けによる個体保全の例は、インターネットで情報を配信することができた。また、ワサビのゲノム解析を始めることができた点は本研究の目的達成のうえでも大きな進歩であり、既に、ゲノムの約3割をカバーする配列が得られている。本情報を利用してマーカー開発を急ぎたいと考えている。そのため、DNA解析は予定よりも遅れてはいるものの、網羅的な情報が得られた点は評価できると考えており、今後につなげたい。
|
今後の研究の推進方策 |
当初、部分塩基配列の決定を、自ら行うつもりで計画をたてていた。しかしながら、この短い時間のなかで、解析技術の著しい進歩があり、ゲノムデータを入手する方向に舵を切った。DNA実験の進捗は予定よりは遅れているものの、得られたデータは網羅的で、推定1Gのゲノムの約3割の配列結果が得られている。本データを活用すれば、ゲノムに散在するDNAマーカーを、クローニングなどの実験を経ることなく得られ、効率化をはかることができた。早急にDNAマーカーを作成し、各地のワサビ、ユリワサビ、オオユリワサビと、交雑集団の集団解析を行いたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
多少の未使用額が発生しましたが、研究は順調に進んでいるため、問題ありません。 26年度の研究における、試薬、物品の購入にあてる。
|