研究課題/領域番号 |
24510330
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
伊東 明 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40274344)
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研究分担者 |
平山 大輔 三重大学, 教育学部, 准教授 (00448755)
松山 周平 京都大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (30570048)
名波 哲 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70326247)
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キーワード | 移入種 / 在来種保全 / 雑種化 / タンポポ / 遺伝子汚染 / 葉緑体DNA / ハプロタイプネットワーク |
研究概要 |
1.在来二倍体タンポポ葉緑体ハプロタイプの地理的変異:関東甲信越のカントウタンポポ(トウカイタンポポ、シナノタンポポを含む)10個体群の各2~6個体について葉緑体DNAの8遺伝子間領域の塩基配列を決定し、前年度のデータと合わせてハプロタイプネットワークを作成した。全32のハプロタイプのうちカンサイタンポポのみに見られるハプロタイプもあったが、カントウタンポポとカンサイタンポポ共に見られるものもあり、最近まで2種間に遺伝子交流があったと思われる。形態からカントウタンポポ、トウカイタンポポ、シナノタンポポンポポと判断した個体には共通するハプロタイプが多く、これら3つを亜種とする見解を支持した。これらの結果から、雑種起源をある程度推測できると思われたが、共通のハプロタイプも存在するため、起源地の詳細な推定は難しいことが示唆された。 2.雑種タンポポの起源の推定:四倍体雑種タンポポに多く、在来二倍体タンポポから全く見つからなかった葉緑体ハプロタイプの起源を調べるために、このハプロタイプを簡易に識別できるPCRプライマーを開発した。 3.マイクロサテライト解析:四国、近畿、東海、関東地域の在来二倍体種(カンサイタンポポ,カントウタンポポ)12集団各8個体を対象に5つのSSR遺伝子座の遺伝子型を調べ、ベイズ理論による方法で解析した。その結果、カンサイタンポポとカントウタンポポの間以外に、四国と近畿のカンサイタンポポ、三重県と東海・関東のカントウタンポポの間にもある程度の遺伝的分化が認められた。 4.雑種タンポポの生態特性の多様性:大阪に多い雑種クローン6種類の栽培実験を実施し、成長特性を明らかにした。その結果、成長特性はクローン間で変異があることが明らかとなり、成長特性には葉緑体DNAのハプロタイプ(雑種の母親となった在来二倍体種の違い)が関係していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.日本の在来二倍体種の分布域のほとんどを含む地域について葉緑体DANハプロタイプネットワークをつくることができた。その結果、雑種タンポポの母親種がカンサイタンポポかカントウタンポポかの特定がある程度可能になった。一方で、亜種の関係にあるとされるカントウタンポポ、トウカイタンポポ、シナノタンポポの間では、葉緑体ハプロタイプによる判別が難しいことがわかった。 2.在来二倍体種から見つかっていない四倍体雑種のハプロタイプを網羅的に探すために必要なプライマーを開発することができた。今後、このプライマーを使った広域での探索を計画している。 3.SSRデータに基づいたクラスター解析で、在来二倍体タンポポの地理的遺伝構造がある程度推測でき、SSRを用いた雑種タンポポの起源地推定の可能性を示すことができた。 4.雑種クローンの栽培実験によってクローンによって成長特性が異なることが明らかできた。また、雑種の成長特性が雑種母親の葉緑体はハプロタイプに影響されていることが示唆され、生育環境によって特定のクローンが選択されてきた可能性があることを示すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
1.在来二倍体タンポポ葉緑体ハプロタイプの地理的変異:サンプル数の少ないカントウタンポポのサンプルを更に追加して、ハプロタイプネットワークを完成させる 2.雑種タンポポの起源の推定:雑種タンポポの葉緑体DNA解析を完成させ、1の結果と合わせて、雑種タンポポの母親種と形成地域、拡大過程を推定する。 3.マイクロサテライト解析:二倍体在来種の解析サンプル数と地域を増やし、地理的な遺伝構造を明らかにする。各地域の雑種の解析を実施し、雑種と在来種のデータを総合してクラスター解析を行い、雑種の形成地域を推定する。 4.雑種タンポポの生態特性の多様性:在来種と雑種の両方について葉緑体ハプロタイプの異なる個体の栽培実験を行い、葉緑体ハプロタイプと成長特性の関係を明らかにする。 5.すべての結果を総合し、雑種タンポポの起源と拡大過程について総合的にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
雑種タンポポのハプロタイプ解析のプライマー開発に時間が掛かったため、当初H25年度に予定していた多量サンプルの解析ができなかったため、遺伝子解析実験の試薬、及び、外注費を支出しなかったため。 プライマー開発が修了しているので、予定していた多量サンプルの解析をH26年度中に実施するため試薬、及び、外注費として使用する。
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