研究課題/領域番号 |
24510332
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京情報大学 |
研究代表者 |
原 慶太郎 東京情報大学, 総合情報学部, 教授 (20208648)
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研究分担者 |
富田 瑞樹 東京情報大学, 総合情報学部, 准教授 (00397093)
平吹 喜彦 東北学院大学, 教養学部, 教授 (50143045)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 津波被災地 / 海岸エコトーン / 景観生態学 / 自然再生 / エコロジカルネットワーク / リモートセンシング / GIS |
研究概要 |
本研究は、東日本大震災で被災した海岸エコトーンの再生に関して、仙台湾沿岸の平野部を対象地域として、景観生態学的な観点から生態系の連結性(connectivity)の観点から、生態系及び生物多様性の保全に結びつくエコロジカル・ネットワークを再構築し、海岸エコトーンの再生の方策を示すことを目的とする。衛星リモートセンシングデータを用いて緑被地を抽出し、GIS(地理情報システム)を用いて緑被地パッチ間の連結性を定量的に評価する。景観生態学的な観点から、再生目標とすべきエコロジカル・ネットワークを抽出し、鳥類の生息状況を指標として、このネットワークの生物多様性保全における有効性に関して評価し、その結果を当地の震災復興における、生態系及び生物多様性保全の施策として優先順位をつけて提示する。 平成24年度は、リモートセンシングによる土地被覆解析におけるグランドトゥルース(現地データ取得)のために、5月と9月に現地に入り、広域的に土地被覆の状況を調査した(原・富田・趙)。また、衛星データ(SPOT/HRG-2)を入手し、震災前後の土地被覆図を基にして景観構造の変化を解析した(趙・原)。さらに、奇跡的に残存した海岸林である宮城野区南蒲生モニタリングサイトの海岸林を重要生息地として位置づけて、林分構造やその後の変化を明らかにするために現地調査を実施した(富田・平吹)。鳥類の調査は緑被地パッチ及び水田跡地などにおいて実施した(平泉)。リモートセンシングとGISによる震災善後の景観構造の変化の解析によって、再生すべき目標景観の設定が可能となる。緑被地パッチ相互の連結性を量的に評価することが可能になった意義は大きいものと考える。これらの調査結果及び解析結果によって、本研究の骨格となるデータを揃えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はほぼ計画どおりに進捗している。研究の鍵となる衛星データ(SPOT/HRG-2)を用いた土地被覆の解析および連結性の評価に関しては、それぞれの手法を確立することができた。鳥類の調査も定期的に実施し、興味深いデータが得られている。一方で、調査域内の屋敷林については、ほとんどが流亡したり、塩害で枯死して伐採されたりし、当初の予想よりも限られることが明らかになった。この点に関しては、当初計画を見直し、空中写真(Google Earthを含む)による予察調査と詳細な現地調査を加えて、その後の景観構造、とくに連結性と鳥類の生息状況との関連性の解析に移ることを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、24年度の成果を踏まえ、コアエリアとなる南蒲生モニタリングサイトと周囲の農村域の植生、及び鳥類に関する現地調査を本格的に進めるとともに、リモートセンシングによる解析結果をそれらの現地調査結果とつきあわせて、エコロジカル・ネットワークの解析を定式化する。南蒲生モニタリングサイトの森林域では、継続して残存した林木の生育状況をはじめとする群落構造を調査するとともに、現地の協力者の支援を受けて、新しく侵入・再生していきた植物の調査を実施する。併せて、周囲農村の屋敷林の現地調査について、鳥類の調査と並行して同一場所で実施し、植物種子の鳥散布にかかる情報を収集する。 リモートセンシングによる解析では、前年度に確立した手法で被災前と後での緑被地パッチを抽出し、景観構造、とくにパッチの連結性を定量的に解析する手法の定式化を進める。その結果を踏まえ、当該仙台平野域における、ソース生息域(比較的良好な森林がまとまった地域)と、シンク生息域(その周辺の微少な緑被地)とを区分し、それらの間をつなぐ可能性のある緑被地をGISの空間解析で探索する。その上で、抽出された緑被地間の連結性を定量的に評価し、エコロジカル・ネットワークの構造を明らかにする。さらに、鳥類を指標として、景観生態学的な観点からネットワーク構造を定量的に評価する。それらをもとにして、生物多様性の保全につながる景観再生に関して提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、2年目にあたるため、衛星データによる土地被覆の解析結果にかかる現地検証と、残存した緑被地パッチの植生及び植物相調査、鳥類相調査、分担者・研究協力者による合同打合せなどにかかる旅費、研究協力者に対する調査謝金、リモートセンシング・GIS解析にかかる消耗品、成果発表のための学会旅費などを計上している。現時点では、平成25年6月に盛岡で開催される日本景観生態学会大会、及び8月に英国ロンドンで開催されるINTECOL(国際生態学会議)等での発表を予定しており、その旅費を計上している。なお、平成24年度は、天候や協力者の事情によって現地調査が予定どおり実施されなかったことがあり、予算の一部を基金化した。平成25年次はその執行に充てる。
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