研究課題/領域番号 |
24510334
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
日野 輝明 名城大学, 農学部, 教授 (80212166)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニホンジカ / 栄養分析 / 糞分析 |
研究実績の概要 |
これまでの分析結果から,植物現存量とシカの個体数指標となる糞塊数の間には有意な正の関係があること,糞分析によって調べられたシカの食性に含まれるササ,単子葉類(ササ以外),双子葉類の割合は,シカが中心に活動する行動圏内の餌植物の構成を反映していることが明らかになった。今年度は,餌植物の栄養分析によって調べたカロリー量,炭水化物,粗タンパク質,脂肪,繊維の量がシカの個体数とどのような関係にあるかを分析した。季節的な変化はあるもの相対的な大小関係で示すと,炭水化物,粗タンパク質,脂肪の重量比は,双子葉>単子葉>ササであったのに対して,繊維の重量比はササ>単子葉>ササであり,カロリー量については差がなかった。植物の構成比と栄養の割合を掛け合わせたものをその地点全体の栄養量として求め、シカの糞塊数との関係を調べたところ,炭水化物,粗タンパク質,脂肪のそれぞれの全体量とは有意な負の関係,繊維の全体量とは有意な正の関係が得られ,カロリーの全体量と有意な関係は得られなかった。以上の結果から,大台ヶ原のシカは行動圏内の植物の構成に応じて食性を柔軟に変化させてはいるものの,個体数は消化が難しい植物繊維の量によって決められており,共生微生物によって繊維を効率よく消化吸収しているシカの特性を反映していた。大台ヶ原では,他の植物に比べて繊維が多いササがシカにとって重要な餌であり,現存量の豊富なミヤコザサがシカの高密度をもたらしていることが、栄養面からも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度はシカの採食量の調査を行い、その結果とこれまでの結果とを合わせて分析を行い、最終年度のとりまとめを行う予定であったが,4月から6月にかけての膝の故障により予定していた野外調査を行うことができなかったことから,1年間期間を延長して調査を行うことになった。
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今後の研究の推進方策 |
3年分のデータに基づいて、シカの個体数分布と食性、植物資源の現存量や採食量および栄養的な質との対応関係、異なる植物資源間の相補的な関係、糞の窒素含有量と食性内容との関係などを明らかにする。この解析に基づいて、個体あたりの植物資源の量と質を場所と季節ごとに求めることで、植生条件の異なる区域間のシカの個体数分布と季節変化が、個体あたりの植物資源の量と質が場所間で等しくなる「理想自由分布」に従っているかを検証する。この検証結果に基づいて、東西間や林内と林縁との間で植生条件の異なる大台ケ原における広域的なシカの植物資源利用のメカニズムを解明する。さらに、得られた解析結果をもとに、植生条件に応じたシカの個体数調整や目標頭数に応じた植生管理(例えば、主要食性であるミヤコザサの刈り取りやドライブウェイ沿いの法面雑草の管理など)について、ゾーニングの提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年4月から6月にかけての膝の故障により予定していた野外調査を行うことができなかったことから,1年間期間を延長して調査を行うことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度できなかったシカの採食量の調査の経費に未使用額を当てる。
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