平成28年度は、平成27年末から香港で浮上してきた独立運動と、従来の民主化運動の関係、およびそれに対する中国中央政府の対応の研究を進めた。 6月4日に香港で、民主派が開催する天安門事件追悼集会に合わせて開催された、独立派の学生らによる集会を観察し、香港の新しい政治思潮や、香港人の中国に対する見方の変容を観察した。また、7月1日の民主派のデモに合わせて現地調査に赴き、立法会議員選挙候補者による選挙活動に同行し、香港民主党幹部へのインタビューを行い、民主派によるデモに参加するなどの調査を行った。 本年度は香港で大きな選挙が相次いで行われたため、これらの調査もおこなった。9月4日に投開票が行われた立法会議員選挙については、香港での選挙運動の観察に加え、北京も訪れて当地の香港問題の研究者と意見交換を行い、中国側から見た香港の現状に対する評価・認識を聞き取ることができた。 こうした調査の結果を踏まえて、研究成果の公開にも力を入れた。平成27年度のアジア政経学会での報告を受けて執筆した論文など、雑誌論文6件を公刊し、12月には香港に赴いて中国・台湾・香港の研究者とともにシンポジウムにおいて登壇し、本研究で得た知見を東アジアの比較の文脈において議論する機会を得た。同シンポジウムの成果は香港において公刊される予定である。 また、香港の政治情勢の大きな変化を受けて、ウェブサイトや雑誌などの各種の商業メディアにおいても、頻繁に解説を行い、研究成果を社会に広く還元することができた。
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