研究課題/領域番号 |
24510339
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
美甘 信吾 信州大学, 経済学部, 教授 (90377614)
|
キーワード | 経済ガバナンス / 政治制度 / 東南アジア政治経済 / 経済・金融改革 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
市場を機能させ安定的な経済成長を導く経済ガバナンスの制度的特徴は何か。本研究では、インドネシア・タイ・フィリピンを中心とする東南アジア諸国の事例を分析し、政治制度と経済ガバナンスの関連性の解明を試みる。経済成長と経済・金融危機という大きな経済変動を経験し、民主的な政治体制を模索する中で経済ガバナンスの課題に直面した東南アジア諸国の経験から得られる教訓は何か。国や地域の歴史社会・政治経済制度の文脈を重視し、現地調査により情報を収集し分析する地域研究のアプローチから探究し知見を得る。今年度も昨年度に引き続き、①既存研究のレビュー、②国内の研究機関及び現地調査による情報・資料収集と分析③研究成果の報告、論文の刊行と草稿準備を行った。 ①既存研究のレビュー:民主制度とガバナンスに関する既存研究は膨大であり継続的な課題だが、今年度はレビューを通じて研究の焦点を絞ることを念頭においた。事例分析により、経路依存性の強い政治経済制度とその変化に着目し、金融危機の回避と対応、金融・銀行業改革を分析する手法について論点を整理した。 ②現地調査による情報収集・分析:タイ(バンコク)での現地調査を夏期に約1週間(9月2日~9月6日)行った。現地調査では、現地での出版物・報告書・論文などの収集、中央銀行職員(元中央銀行総裁)や銀行協会幹部への聞き取り調査を中心に行った。補足のためにアジア経済研究所図書館など国内の研究機関でも統計資料などの収集を行った。 ③研究成果の報告:本研究の一部の成果の中間報告として、国内外の学会や研究会で報告を行った。学会報告を通じアメリカやアジアの研究者と議論し、成果に対する評価を得るとともに今後の研究のために有益な示唆を多く得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経済ガバナンスと政治制度に関する研究は、英語での出版物も増えているが、統計的な手法を使った多国間の比較研究が多い。既存研究とフィリピンなどで収集した情報を元に、公式・非公式な政治制度とその変化に着目し、経済・金融危機への対応、金融・銀行業改革を分析するための論点を整理し、研究報告を行った。報告を通じて国内外の研究者と意見交換を行い、本研究の独自の貢献と意義についての評価が得られた。また、さらに研究を発展させていくための有益な示唆を得た。タイでは、現地調査を行い情報収集・分析をおこなった。インドネシアの事例については、さらに現地調査などで情報を収集し、事例分析を行う必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
政治制度と経済ガバナンス、金融・銀行業の改革及び東南アジア政治経済に関する文献レビューは継続的に行う。フィリピンやタイの事例に基づく研究報告、論文や書籍の刊行準備を進めていく。事例分析のための現地調査は、インドネシアとタイを中心に行う。特にインドネシアの事例分析に時間を割く予定。現地調査を効率的に行えるように、国内の研究機関(アジア経済研究所など)の資料も有効に活用したい。さらに事例分析を深め最終的な研究報告をまとめていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究報告と論文草稿準備に予定以上に時間がかかり、現地調査期間が予定より若干短くなった。 現地調査と国内外での研究発表や研究者との意見交換のための旅費が中心となる(800,000円)。残りは書籍などの物品費(300,000円)を予定している。
|