研究課題/領域番号 |
24510340
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
萩尾 生 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10508419)
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研究分担者 |
長谷川 信弥 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (20228448)
塚原 信行 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20405153)
柿原 武史 南山大学, 外国語学部, 准教授 (10454927)
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キーワード | 言語政策 / 少数言語 / 対外政策 / 文化外交 / スペイン / バスク / カタルーニャ / ガリシア |
研究概要 |
2年度めは、初年度に補助事業者がそれぞれ実施した現地聴き取り調査の結果を持ち寄って分析し、そこから生じた疑問点などについて、さらなる現地聴き取り調査を実施した。 具体的な訪問先は以下のとおりである。①バスク語の対外普及については、バスク自治州のエチェパレ・インスティテュートを再訪したほか、ナバーラ自治州政府とナバーラ・バスク語インスティテュートを訪問。②カタルーニャ語については、カタルーニャ自治州のラモン・リュイ・インスティテュートを再訪したほか、バレンシア自治州のバレンシア言語アカデミー、バレアレス諸島自治州のバレアレス研究所を訪問。③スペイン語とカタルーニャ語の対外普及の現場の事例参照として、それぞれ東京のセルバンテス協会と法政大学に対して、聴き取りを実施。④スペイン語の対外普及とガリシア語支援については、先方との日程調整がつかず、次年度前半に再度の聴き取り調査を実施することとした。 上記①②③から得られた知見は、次のとおりである。(i)スペインの地域語の対外普及について、中央政府と自治州政府の権限分掌に関する見解の相違が政党間に存在し、自治州の対外言語普及政策は当該自治州の政権担当党の意向に左右されている。(ii)2014年3月に公布された「国家の対外サービス活動に関する法律」は、スペインの対外政策における中央政府と自治州政府の権限分掌を新たに規定づけるものである。(iii)対外言語政策における「ソト」と「ウチ」の境界線が、カタルーニャ語の場合、自治州の境界線とほぼ一致しているが、バスク語の場合そうではない。(iv)対外言語政策の現場については、今後さらなる事例を集めていく必要がある。 なお、本研究の中間報告的な性格のものとして、平成25年度中に、論文3点(査読有り国際学術誌1点、査読有り国内学術誌1点、査読無し国内学術誌1点)と著書1点(分担執筆1点)が発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた現地調査は、1件を除きすべて順調に実施されて、目下の研究作業の重点は、現地調査分析を経て洗い出された問題点の整理とそれらの相関関係の構築に移行してきている。 また、平成26年度達成を目標としていた査読付きの国際学術誌への投稿については、平成25年度中に、米国で創刊されたバスク研究国際ジャーナルBOGA誌に論文1点が掲載された。このほか、国内学術誌に論文2点(うち1点査読付き)、国内著書への分担執筆も平成25年度中に実現した。 スペイン語対外普及とガリシア語支援については、上述のとおり、2度めの現地聴き取り調査を平成25年度内に実施できなかったが、平成26年度前半に調査を遂行する予定であるため、研究遂行上の遅れや支障は、実質的にほとんどないと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる平成26年度の研究推進方針を、以下のとおり計画している。 ①昨年度実施できなかった、スペイン語対外普及とガリシア語支援についての関係機関に対する追加聴き取り調査の実施。具体的には、マドリードのセルバンテス協会とガリシア自治州政府言語政策局を予定。また、スペイン国内ではないが、バスク語話者とカタルーニャ語話者の言語共同体が存在する隣国フランス(及びアンドラ)において、これらの言語の対外普及がどのように認識されているかの現地聴き取り調査の遂行。具体的には、前者については、ピレネー・アトランティック県行政府およびバスク文化インスティテュートを、後者については、ピレネー・オリエンタル県行政府ほかを予定。 ②法的に変化の兆しがあるスペインの対外政策の動向追跡と、欧州各国における対外言語文化普及機関の連携動向の参照。具体的には2014年3月に公布された「国家の対外サービス活動に関する法律」や、英国のブリテッュ・カウンシルが主導しているLanguage Rich Europeの動向あたりが、参照対象。 ③研究成果の公表と、成果報告のとりまとめ。前者については、多言語社会研究会大会で調整中。後者についてはウェブ公開を想定。 上記の①②を年度前半に完了させ、年度後半に研究成果の公表を実施し、年度末に成果報告をとりまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の実地聴き取り調査結果を分析した結果生じてきた疑問点を明らかにすべく、さらなる聴き取りを行うために、平成25年度中に再度マドリードのセルバンテス協会ならびにガリシア自治州政府を訪問する準備を周到に行ってきたが、本研究の研究分担者と先方の担当責任者との間で、日程の調整が最終的につかなかったことに因る。 平成25年度中に予定していながら実施できなかった上述の実地聴き取り調査1件を、平成26年度前半に行う予定である。調査目的ならびに経費は、昨年度計画のものをそのまま適用する。
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