研究課題/領域番号 |
24510341
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 香子 京都大学, 総合地域研究ユニット, 研究員 (60467420)
|
キーワード | サンブル / ケニア / 一夫多妻 / 恋愛結婚 / 未婚の母 / 学校教育 / スルメレイ / ライフステージ |
研究概要 |
24年度に収集したデータの分析結果、およびその考察を、国内・国際学会や、および研究会で積極的に発表した。(日本アフリカ学会・東京、東アフリカ牧畜研究会・長崎、アメリカ・アフリカ学会・ボルチモア)とくに、アメリカ・アフリカ学会参加時には、連携研究者のホルツマン博士とをふくむ関連分野の研究者と研究の実績を報告し合い、西アフリカを含む広い範囲での女性がどのように人生を選択しているのかを議論するセッションで参加・発表することができ、非常に有益な意見交換ができた。 また、前年度に続き、文献研究・現地調査を実施して、アフリカ女性のライフコースに関する知見を深めた。現地調査は、25年8月末から9月末にかけて約1ヶ月、ケニア共和国の牧畜社会サンブルにおいて実施した。当初の予定に沿って、女性の割礼・結婚・出産の相互関係を解明するため、サンブルの高地(より開発が進んでいる地域)と低地(比較的牧畜業につよく依存している地域)の両方で、未婚期の妊娠への対処(中絶か出産か)とその決断の背景となる事実についての聞き取りを進めた。この結果、未婚女性は割礼を受けているか否かによって、妊娠への対処が明確に分かれることを実証的に示すことが可能となった。その他の要因としても、その女性本人と家族(父親、母親、兄弟)、および妊娠の相手の教育レベルや職業や居住地域なども重層的に関与していることが明らかになった。 さらに、26年1月初旬から中旬に約2週間、エチオピアにおいて現地調査を実施した。エチオピアにおける調査は、オロモ地域を中心に実施したが、「女性の割礼」という問題に対する、政府の規制や価値観の統一化がケニアよりもつよく進められる一方、割礼に対する人々の態度の多様化という現象もつよく認められた。非常に興味深い現象として、女性の割礼について人々が何も語りたがらない、徹底的に隠蔽する、ということが同時に起きていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画に加え、エチオピアで短期の調査を実施することにより、比較の視点を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度は、これまで明らかにした女性のライフコースの変容を男性のライフコースの変容との関わりのなかで、その相互作用を分析することをとおして、男性と女性のライフコースの変容をサンブル社会全体に位置づける。サンブルの男性は、従来、決められた時期に集団的に割礼と結婚をしてきたが、近年、個別の選択をする人びとが増え、そのライフコースも多様化している。女性のライフコースに関する24年度、25年度の調査結果を、男性のライフコースの変容に関する調査結果と統合して分析することにより、男女のライフコースの変容の相互関係を分析する。女性の恋愛形態・結婚形態[一夫多妻/一夫一妻/恋愛結婚/見合結婚]の選択は、裏を返せば男性のそれでもある。それぞれの選択をおこなった女性と彼女のパートナーである男性のライフコースを並置して考察し、たとえば、男女の教育レベルや職業[牧畜業/自営業/賃金労働]とライフコース選択は相互にいかなる関係があり、世代ごとにどのような傾向を示すかなどを明らかにする。このため、現地調査を8-9月に5-6週間実施する。 また、さらに視野を拡大し、現代アフリカ女性のライフコースの変容の総合的な分析と考察を実施する必要があるが、このためには、これまで得られた調査結果の分析と文献資料の読解をおこなう。また、国際学会に参加することにより、サンブル研究者のジョン・ホルツマン、ビリンダ・ストレイトなどと知見交換を実施する場をもち、研究成果に関する議論を深め、他地域における現代アフリカ女性のライフコースの変容との比較分析と考察をおこなう。これらの結果を論文として執筆し、発信する。
|