最終年度である2014年度は、これまで明らかになった、サンブル女性の新たなライフコースの創出過程、すなわち、従来は、結婚と同時に受ける割礼により「未婚=出産できない」と「既婚=出産できる」に二分されてきたライフコースが、結婚以前に割礼を受けて、未婚のうちに出産できる状態(「スルメレイ」)を獲得する女性が増加している現象とそれに伴って起きている諸現象を、男性のライフコースの変容を含む、社会全体に位置づけて分析・考察した。 男女のライフコースの世代ごとの特徴と相互関係を分析(男女の教育レベルと職業[牧畜業/自営業/賃金労働]は、恋愛形態・結婚形態[一夫多妻/一夫一妻/恋愛結婚/見合結婚]の選択にいかなる影響を与えているか、など)した結果、サンブルの人びとの恋愛・結婚の形態は、大きな変容の過程にあることが明らかになった。「伝統的」恋愛形態であった、「ビーズの恋人関係」は、過去約30年のあいだに、学校教育の普及にしたがって減少する傾向にあったが、現在の「モラン」の年齢組の時代(2005~現在)になって急速に衰退し、ほぼ消失に近い状態になっていた。この現象と並行して、従来は、外婚単位であるクランの内部でつくられていた恋人関係が、学校教育などを通じて構築されるより広範な社会関係のなかでつくられるようになり、「未婚期の恋愛が結婚に結びつく」という、この社会ではどちらかと言えば忌避されてきた選択を、多くの人が行うようになっている。このような変化と女性のライフコースの変容、また、結婚により、男性も女性も新たな年齢範疇に移行し、生まれ変わったかのように生き様を潔く変化させるという従来の年齢体系にもとづく社会規範の変容過程を総合的に分析した。
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