研究課題/領域番号 |
24510345
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 友美 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40337746)
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研究期間 (年度) |
2014-02-01 – 2017-03-31
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キーワード | タイ華人 / 宗教 / 仏教 / 道教 |
研究実績の概要 |
当初、タイ華人が行う数多くの年中儀礼に参与し、各儀礼にかかわる神仏や供え物、儀礼・祭礼のプロセス、そしてそのそれぞれの意味を詳細に検討・分析することによって、タイ華人が継承する宗教世界の解明を試みる計画であった。しかし、通念にわたって頻繁に行われる祭礼について、逐一海外渡航のうえ、フィールド調査を実施することは、想定以上に困難であり、ルーツや使用言語の異なるタイ華人の小集団間の関係が必ずしも良好でないケースがあり、アプローチできる集団に偏りが生じることが分かったため、フィールド調査とともに、文献調査による研究を実施することとした。本年度は、マイクロリーダーを購入し、1888年から1941年までのBangkok Times紙のマイクロフィルムを貸与して、そこに記されたタイ華人の寺廟・宗教儀礼・宗教活動に関する記事の収集に努めた。さらに、1900年前後に刊行されていた日本の仏教雑誌『中外日報』に掲載されたタイ華人の宗教活動・信仰に関する記事を収集し、これまでのフィールド調査による知見と照合する作業を行った。また、タイ華人のルーツである中国南部沿海地域の観音信仰と女性に関して、タイ以外の国での展開と比較の視点が得られたので、韓国語資料の翻訳を依頼し、解析に当たった。2015年2月には、春節の時期に合わせてバンコクに渡航し、従来からの研究協力者であった斎堂の住持に同行して信徒の家庭を訪問し、各家庭で行う春節の祭礼について、参与観察を行った。またバンコクの華人街の中心であるヤワラートにある主要寺廟における春節の祝祭に参与し、各寺廟における祭礼や供食、供物等について情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年7月31日から2か月ほど、家庭の事情により、タイ華人の祭礼の時期に合わせてタイに渡航し、フィールド調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、バンコクのタイ華人寺廟における祭礼について、主としてフィールド調査によって研究を行う予定であったが、1900年前後の新聞資料等を用いた文献調査を行い、出身地域・言語の異なるタイ華人小集団による組織化と主たる寺廟建立の経緯についての解明すること、またタイ華人同じく中国南部沿岸地域をルーツとする華人たちが近隣東アジア・東南アジア諸国にもたらした道教・仏教文化の展開についての知見を深め、比較・検討することにより、タイ華人の信仰形態の解明の手掛かりとなる視点を獲得することにより、歴史的視点と幅広い視野をもって、的確な研究課題の解明に当たることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
家庭の事情により、海外でのフィールド調査を中心とした研究の実施が非常に困難となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
遅れを生じさせた主たる要因を解決することができ、今後はより円滑に研究を実施できるようになった。次年度以降は、タイ華人とルーツを同じくする華人たちが台湾・韓国・マレーシア・インドネシア等の東アジア・東南アジア諸国にもたらした宗教文化の軌跡をたどり、比較の視点を得ることにより、タイ華人の宗教世界の解明を促進する。
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