研究課題/領域番号 |
24510346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西 佳代 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90416058)
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研究分担者 |
松島 泰勝 龍谷大学, 経済学部, 教授 (20349335)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グアム |
研究概要 |
現在日米安全保障体制は、沖縄県民の基地負担を軽減しつつアジア太平洋で米軍基地の抑止力を強化するという課題に直面している。そのために策定されたのがグアム統合軍事開発計画である。 グアム統合軍事開発計画は、在沖縄海兵隊のグアム島移転をはじめとする大規模な人口移動を促す。しかし日米両政府は、人口増が基地外に及ぼす負の影響への対策を十分考慮していなかったため、島民は基地外では社会資本やサービスが逼迫し、基地内外で住民の生活の質の格差がこれまで以上に拡大することに対して懸念を表明した。 現在アメリカでは、グアムにおける基地内外格差の問題が、初めて連邦レベルの政治的関心事項となっているが、日本では、この問題に対する関心は皆無といってよい。そこで本研究は、これまで日米両国で等閑視されてきたグアムにおける基地内外格差の実態を解明し、日米同盟のあり方を議論する契機を提供することを目的としている。 先行研究では、海外基地における環境汚染や人権侵害などが「大規模な不正義」として把握されていることをふまえ、本研究では「不正義」の内容を基地内外格差として具体化しようとする試みである。初年度(平成24年度)では、研究分担者とともに、グアムの基地拡張にともなう社会的変化や、グアムの水資源の分野における基地内外格差の実態を調査した。 先行研究ではまた、基地が軍の治外法権となっていることが「大規模な不正義」を引き起こしていることが明らかにされてきた。そこで初年度(平成24年度)では、資・史料にもとづき、在グアム基地における米軍の治外法権は、連邦議会の不作為によって支えられている制度であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、初年度では、まず社会資本や社会サービスのほか、環境汚染の分野における基地内外格差を明らかにすることを計画していた。研究の結果、グアム統治体制の歴史的形成過程のほk、基地内外の格差を引き起こしている制度的要因が明らかにされた。さらに、また、そのような制度が基地内外で格差を生じさせている実態を、水資源の分野で実証的に明らかにすることができた。ただし、水以外の分野における格差の解明は今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度から26年度にかけては初年度の作業を継続し、水以外の分野についての基地内外格差の実態の解明に努める。同時に、基地内外格差が形成された歴史的経緯を明らかにする。またグアムにおける基地内外格差の問題が、連邦レベルでは人種政治と関連づけられている様子を明らかにする。この点、ヴァージニア州選出の民主党連邦議員ジェームズ・ウェッブは、グアムにおける基地内外格差問題を本土の人種政治の枠組みの中に位置づけるうえで、重要な役割を果たしてきた政治家であると評価できることから、ウェッブが提言した対グアム政策を調査する。 平成26年度では、民主党と共和党の対グアム政策の違いを明らかにする。 最終年度では、三年間の研究を総括するため、研究分担者のほか、グアム大学や在グアム日本国総領事館の研究協力者と研究成果についての意見交換を行う。その際、特に今後の日米安全保障体制のあり方について重点的に考察する。最終的な考察結果をまとめ、研究成果を国内外の学会や学会誌等で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は予算700,000円のうち553,928円を使用したが、これは円高や日本人観光客誘致を推進するグアム政府の観光政策のため、平成24年度の海外出張に関する旅費が当初の計画を大幅に下回ったことによるものである。また研究分担者は、配分した200,000円のうち194,091円を使用し、残額5,909円は研究代表者に返納されることとなった。 平成25年度には、本研究の充実と発展・発信にとって重要な活動計画が新たに加わった。一つは、京都大学人文科学研究所が大学共同利用機関法人・人間文化研究機構・地球環境戦略研究機関と共同でフィージビリティ調査を行っているプロジェクト「軍事環境問題」に参画することとなった。当該プロジェクトは、国内外の軍事環境問題専門家を招いて研究会が定期的に開催される予定であり、研究代表者も参加予定である。また10月24・25日に台湾で開催される「東アジア環境史研究会」で発表する機会が与えられた。当該研究費は、上記の追加的な活動を中心に充当することとしたい。
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