研究課題/領域番号 |
24510352
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
戸田 徹子 城西国際大学, 国際人文学部, 准教授 (50183877)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 米国フレンズ奉仕団 / AFSC / クエーカー / NGO / 日米関係 / 日米交流 / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
研究実績の概要 |
1. 初年度実施の米国フレンズ奉仕団(the American Friends Service Committee、以下AFSC)本部資料室における資料所蔵調査に基づき引き続き平成26年度も、全資料から日本関係の資料を探し出して複写する作業を繰り返した。1920年代末期から1930年代はじめの書簡やパンフレットなどの資料に目を通したが、大恐慌の経済不安や大学生の左翼化を報告する内容が多かった。さらに本部と現地職員の新施設建設をめぐる対立関係も判明した。 2. 「AFSC奉仕団オーラル資料400シリーズの分析」として、日系アメリカ人収容と学生転住に関するAFSCオーラル資料をまとめた。この資料は、日系アメリカ人7名とAFSC関係者4名(白人)のインタビューを、スクリプトに起こしたものである。日系人については19点、AFSC関係者については18点の項目を設定し、これにそって内容を整理した。 3. 編著書 Phila-Nipponica: An Historic Guide to Philadelphia & Japan が出版された。この中で民間セクターによる国際交流や国際援助の先駆者として、2人のAFSC職員―ヒュー・ボートンとエスター・ローズ―を取り上げた。ボートンはAFSC職員として1920年代末に日本に駐在した。帰国後に日本研究の専門家となり、対日占領政策立案に携わった。ローズは太平洋戦争期間中、AFSC職員として日系人収容所で日系人救援活動や学生転住活動に従事した。さらにPhila-Nipponicaでは、メアリ・モリス、アナ・ハーツホーン、普連土学園も紹介したが、これによってAFSCの日本との繋がりが明治時代に遡っていることが理解できる。 4. 日本で活躍したAFSC関係者として、ギルバート・ボールズ、トム・ジョーンズ、フロイド・シュモーなどに関する資料も収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定されていた研究のうち、次の3つを終えることができた。(1)本研究に関係する期間(戦間期ならびに戦中)について、AFSC本部資料室の日本関係資料のうち1930年代初めまでの記録に目を通した。(2)入手した資料のうち、AFSCのオーラル資料について、資料整理を完了させ、まずは資料紹介をする目的で「米国フレンズ奉仕団オーラル資料400シリーズの分析」を作成した。(3)すでに入手済みの資料の中から、ヒュー・ボートンとエスター・ローズについて、日英の両言語でエッセイを書き、編著書の一部としてこれを出版した。
AFSC本部資料室の日本関係資料が未整備で、資料収集に手間取っている。そのため委員会等の組織を通した分析は困難と判断し、研究の方向性を修正したうえで、平成25年度からはAFSC関係者に焦点を絞り、彼らの活動を通して国際親善や国際理解、国際援助について考察することにした。この変更に伴い資料収集対象が増え、作業に遅れが出た。さらに研究代表者に年度途中の職場異動が生じ、2回予定していた海外調査が1回しかできなかった。これにより研究が順調に進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.今年度は本研究の最終年度となる。資料が未整備で困難をきたしているが、基本的な作業としてAFSC本部資料室の日本関係資料の点検、収集作業は継続する。 2.AFSCオーラル資料(日系アメリカ人収容と学生転住)は存在自体がまだ知られていないことから、「米国フレンズ奉仕団オーラル資料400シリーズの分析」を発表する機会を求め、そこでの議論を踏まえたうえで報告書の一部とする。 3.ヒュー・ボートンとエスター・ローズに加えて、海外伝道からAFSCのような国際NGO型の海外活動の双方を担った過渡期の人物としてギルバート・ボールズ、関東大震災発生時に日本にいて国際援助の道を開いたトム・ジョーンズ、そして日系人収容問題に係ったフロイド・シュモーなども含め、AFSC関係者を時系列に紹介することを通して、AFSCが日米両国で展開した国際親善や国際奉仕、国際援助の活動内容を明らかにする方向で、報告書を作成する予定である。 4.最終年度にあたることから、報告書の準備をするとともに、できればアメリカからAFSCの研究をしている研究者、あるいはAFSC資料に詳しい関係者を日本に招き、学習会を開催できればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属に異動が生じ、予定した夏季休暇中の現地資料調査が実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、できるだけ早い段階で、2回の現地資料調査を実施してこれを補うこととする。
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備考 |
報告書の一部とするため、「米国フレンズ奉仕団オーラル資料400シリーズの分析」を作成した。
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