研究課題/領域番号 |
24510355
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
浦部 浩之 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (30306477)
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キーワード | ラテンアメリカ / 地域協力 / 安全保障 / 地域統合 / UNASUR / ALBA / 国際研究者交流(チリ) |
研究概要 |
前年度に引き続き、ALBAとUNASURが推進する対米自立的な地域統合のプロセスについての分析を進めた。平成25年度には申請段階では想定していなかったいくつかの特殊事情が生じ、研究の方法に関して若干の調整を行った。すなわち、当初はコロンビアとエクアドルで現地調査を行い、両国間で生じた紛争事案に関してUNASURなどの新しい地域機構がいかなる役割を果たしうるかを分析する予定であったが、日本ラテンアメリカ学会定期大会の実行委員長を務めたことによる諸種の用務が入り、この両国での現地調査を行うことができなかった。しかしその分、南米における新しい地域統合に関する特別講演と特別分科会を同大会で企画し、学会負担の招聘ゲスト(エクアドル)の他に本科研費でコロンビア安全保障問題に精通する専門家をチリから招くことができ、本科研課題に直接的に関わる重要論点について議論を深めるとともに、学会の場で成果を還元することができた。なおこの他には、3月にアルゼンチンでの現地調査(UNASUR国防研究所やラプラタ大学地域統合研究所などを訪問)で聞き取り調査や文献収集を行った。 以上の研究活動により、南米諸国の間には米国の推し進めた自由化路線を脱して地域安全保障問題にも関わる政治・社会領域での政府の役割と国家間協力を拡大しようとするコンセンサスが形成されていることを明確に確認することができた。他方で国家間協力のメカニズムについてはその制度化に課題があること、また治安問題・麻薬問題などへの対処には諜報活動が重要でありながらそれにより得られた情報を各国間で共有するメカニズムを構築することがきわめて困難であることなども分かってきた。これらの論点を含めて平成26年度にも研究を継続し、当初の研究目的に掲げた安全保障メカニズム重層化の全体像を明確にしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」にも記したとおり、応募時の研究計画に記していた現地調査に必ずしも十分な時間を割くことができなかった面はあるが、代わりに国外から専門家を招いて学会の定期大会での特別分科会を立てることができ、一定の成果を得ることができた。また研究の中間的な成果を所属機関の紀要に発表することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度も前年度までの成果をふまえ、応募時の研究計画にも記していたとおり、ALBAとUNASURという対米自立的な地域統合が安全保障面で果たしてきた機能(および逆機能)を分析し、また既存の米州機構との役割分担、CELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国連合)という新しい地域統合の構想やその形成プロセスなどについても検討を加え、ラテンアメリカにおける安全保障メカニズムの重層化について最終的な取りまとめを行いたい。平成25年度には予定よりも少ない日数の現地調査しかできなかったが、その分は基金化して本年度に繰り越すことができたので、おおむね支障なく現地調査などを行うことができる見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査の日程と訪問先が当初計画より若干縮小されたことによる。 現地調査を申請時の当初計画よりやや拡大して行う予定であり、それに使用する。
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