平成24、25年度に引き続き、ALBAとUNASURによる対米自立的な地域統合のプロセスについての分析を進めた。本年度はとくに域内諸国間の協力関係の分析に重点を置き、援助を梃子に影響力を及ぼそうとしているベネズエラと、エクアドル、ボリビア、トリニダッド・トバゴなどとの関係を、現地調査も交えて研究した。 一連の調査からは、今日進められている地域統合プロセスにおいて、反米左派の連携を掲げるベネズエラの果たしている役割は実際に大きいことが確認できた。とくにボリビアにおいては基礎教育・識字教育の分野でベネズエラから多くの人的・金銭的資源が投入され、かつそれが一定の成果を上げ、大衆の支持を媒介して二国間関係の緊密化につながっていることを具体的に観察することができた。ただ他方で、この事例をエクアドル、あるいはエネルギー資源を有するカリブ諸国、それをまったく有しないカリブ諸国との比較の中に位置づけると、ベネズエラの反米姿勢にどれほど呼応、協調するかについては、各国の置かれた状況(支援への依存の必要性)、および政治リーダーの思想や政策方針の違いといった点を反映して濃淡が分かれることについても看取された。 本研究期間を通じ、ラテンアメリカ・カリブ諸国には、反米・反ネオリベラリズムという一般化された表層的言説とは異なり、域内諸国の政治・経済・社会・安全保障問題に独自に対処するための地域協力枠組みを構築することについての共通意思が存在し、それが着実に進められて、OASを軸とする米州全体を包摂した既存の安全保障メカニズムとの重層化(併存状況)が生み出されていることが確認された。ただしALBAやUNASURは機構化の水準が低く、政治リーダーの意思に左右されたり体制擁護の道具として利用されがちでったりするなどの問題点も明らかになった。最終的な研究成果については追って論文として発表する予定である。
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