研究課題/領域番号 |
24510356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
渡邊 千秋 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (00292459)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スペイン / 内戦 / 記念碑 / 記憶 / 宗教 / 国家 / 世俗 |
研究概要 |
平成24年度は、スペイン内戦の記憶を市井の人々がどう回復しようとしているのかを、マドリード・コンプルテンセ大学構内に2011年に設置された国際旅団記念碑をめぐる現状から考察した。スペインへの渡航により、現地研究者との意見交換はもとより、国際旅団関係者が所属する国際旅団友好協会などでの調査を実施した。本記念碑の設置をめぐっては賛成者と反対者が大学当局と行政・司法を巻き込んで係争中である。その現状については2013年5月発行予定の学部紀要に掲載される研究ノートで明らかにした。 非宗教的でかつ国籍的にも多元な人々の集団であった国際旅団所属の戦闘員を記念するために近年設置された1記念碑を対象に、その成立をめぐる過程を考察したのであるが、多様な個性をもった人々を単一化して記念(そして追悼)しようとする点で、世俗的な団体の内戦へのオマージュにも、ある意味で宗教的な内戦祈念の形に類似の形態・思考の諸相が存在し、本質的に他者を排除することにつながる恐れがあるという点でいえば、宗教・非宗教的な団体とも共通の問題を抱えているといえる。今期はそのような世俗的・具体的な事例に関する現状把握ができたという点で研究に進歩がみられたと考えている。 なお、当初資料提供を見込んでいた人物が急逝されたため、今後資料収集において、方向性を多少変更する必要が出てきた。ご遺族が資料を見せてくださるかどうか現在協力者を通じて交渉中であり、そのアプローチの仕方をも含めて検討しなければならない課題ができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今後資料へのアプローチの仕方を再考し、新たな資料を探求する必要もでている。個人文書の開放を約束いただいていた人物が急に他界されたことにより、遺族のもとに残った文書へのアクセスをめぐって新たに交渉する必要がでてきたためである。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている資料確保の交渉を継続するとともに、新たな資料を利用する可能性を探りたいと考えている。このような地道な交渉過程においては、現地研究者の協力が欠かせない。 またその一方で、マドリード以外の地域を対象として、世俗的・国家的な記念碑設置の状況に「宗教的」ともいえる要素の混合があるか、あるとすればどのような点からそれを証明することができるのか、を考察したいと考える。 具体的には内戦末期に激しい戦闘ゆえにフランコ陣営・共和国陣営双方とも相当の死者をだしたカタルーニャ地方を対象とすることを念頭においている。現在想定しているインフォーマントが高齢であるという事実を考え、なるべく早い段階でのインタヴューを行う予定であり、現在調整中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
インタビュー実施のための渡航費・滞在費の使用を見込む。 またポータブル・コンピュータ、書籍を購入する予定である。 現在、資料収集に関する交渉をお願いしている現地スペインの協力者への謝礼支払も行う。
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