研究課題/領域番号 |
24510358
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 愛子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10345077)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域研究(イギリス) / 文化史 / ヘリテージ研究 / 文化経済学 |
研究概要 |
本研究課題は、現代において改編・消費・再生産される「伝統的」イギリス文化に付加された諸価値を見出し、そこにどのような「イギリス性(イギリス的特性・イギリスらしさ)」が表象されているかを解釈することによって、現代イギリス社会が包含する特異性を解明しようという試みである。 初年度である平成24年度は、『(1)伝統的建築物の改造~「生活のあり方」を揺るがす物議~』を研究テーマとし、伝統的な田園風景(landscape)および建築物に関する現代的意味と、これを保守・提唱しようとすることで生じる現実的な都市計画や住宅問題からどのような問題が表出しているのかを考察することに主眼をおいた。具体的には、現在の田園風景に林立する一般住宅と、改造が施される伝統的建築物(おもにGrade IIレベル)に関する二次文献を読み進め、新聞や政府刊行物などの一次資料から、現状把握に努めた。そのつぎに、実際に改築許可を得てGrade II建築物にモダンな外装を加えることで事業を行っているヨークシャーの‘Hellifield Peel Castle’の所有者とのインタビューを夏季に予定していたものの、双方の日程調整がつかず達成されなかったことが残念である。 また、研究年度4年目に予定している『文化の海外投影――他者の目から見た伝統的イギリス文化のかたち』調査の一環として、「日本人のイギリスに対する印象(ステレオタイプ)」をさぐるアンケート形式のウェブサイトを立ち上げた。いまだ統計の集計に値するほどのサンプル数は集まっていないが、このアンケートを研究期間である約5年間募ることでかなり実態のある結果が得られると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要でも述べたとおり、24年度は、夏季のフィールドワークが実現できなかったことが最大の誤算となった。その結果、一年間の業績をまとめる論文執筆が立ち遅れている状況である。幸い、本課題は5年の研究期間中4本の大きなプロジェクトをもとに設定されており、研究に遅延が生じた場合のフォローアップ期間に今回の事態を充当することが可能なため、これを利用して今後の計画的な研究遂行をめざしたい。
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今後の研究の推進方策 |
現地インタビューを予定していた‘Hellifield Peel Castle’は、その改造の過程をテレビで紹介されたほど高い注目を集めたホテルであるが、今後もこちらが海外出張をハイ・シーズンに行う限り、調査は不可能であると思われる。荒廃した城を改築していった経緯や、周辺との関わり合いの変遷も刻銘に記録されていることから、本研究課題としては最適の事例研究となるはずであったが、家族経営の人気ホテルゆえに夏季出張中のインタビュー調査がほぼ絶望的なことから、代替としての建造物を現在探している。候補としてはサセックス州のNewickホテルを現在念頭においている。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の立て直しを第一目標として、『(1)伝統的建築物の改造』の問題の検証および考察を行う。具体的には、住宅問題解決推進派とGrade II建築物保護派の対立が鮮明な事例を挙げ、実際にどのような問題が生じているのかを夏季のフィールドワークにおいて明確にし、双方の言説がどのように形成されたのかを歴史的・理論的に読み取る作業を行う。年度の後半には、論文執筆を完了させ、国際学術雑誌のCultural ValuesあるいはCultural Policyに投稿したい。
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