研究課題/領域番号 |
24510358
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 愛子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10345077)
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キーワード | 地域研究(イギリス) / 文化史 / ヘリテージ研究 / 文化経済学 |
研究概要 |
本研究課題は、現代において改編・消費・再生産される「伝統的」イギリス文化に付加された諸価値を見出し、そこにどのような「イギリス性(イギリス的特性・イギリスらしさ)」が表象されているかを解釈することによって、現代イギリス社会が包含する特異性を解明しようという試みである。 2年目を迎えた平成25年度の目的は、「オークション文化――「生活のあり方」に根差したビジネス志向」を研究テーマとし、イギリスにおける「アンティーク熱」がいかにして生まれ、現代にいたるまで増幅・拡散しているのか、そのメカニズムを解明することであった。本テーマに着手するのと同時に、昨年度予期せぬ事態によって遂行が遅れた「伝統的建築物の改造」に関するテーマを継続研究した。さらに、本研究課題全体にかかわるイギリスの文化関係機関が、時代の趨勢のなかでどのようなイギリス性を意図的に推進しようとしていたのかという概括的な議論については、論文としてまとめ、刊行することができた。 一方、研究年度4年目に予定している「文化の海外投影――他者の目から見た伝統的イギリス文化のかたち」の分析に先立ち、初年度に立ち上げた「イギリス・イメージ調査」のウェブサイトは、現在、緩やかながらも着実にアンケート回答数が増えてきている。ただし、(ある意味予測できたことではあったが)研究代表者自身が接する機会の多い大学生を中心とした若い世代の回答数が顕著である点について、より広い回答者層を構築するためにどのような方策を打ち立てられるか、模索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
刊行した論文の本数こそ現時点では少ないが、伝統的建築物およびオークション文化に関する調査と研究は、昨年度に比べて順調に進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
本課題において成果を示すため、引き続き研究を継続する所存である。初年度のテーマ「伝統的建築物の改造」を考察するうえで調査対象としていた ‘Hellifield Peel Castle’ については、依然、先方とのインタビュー日程の折合いをつけることが困難な状況が続いているため、現地調査ではなく、メディア表象の分析など、別のアプローチ方法の適用を考えている。オークション文化に関する調査にも同様の分析手法を導入することで、当該研究課題で掲げた各テーマに、より一貫性が生まれることとなるであろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた謝金予算のうち、予定した回数の「専門知識の提供」が行えなかったため。 平成26年度は、海外出張費の割合は当初の計画通りではあるが、<今後の研究の推進方策>で述べた変更点を受け、地方への調査の割合よりも、むしろロンドンにおける研究期間が増えることとなるだろう。当研究課題は、「創られた伝統」という問題を、歴史や表象研究をはじめ、文化経済学的観点からも領域横断的に解明することに意義があるため、海外出張時には、日本で入手困難な文献をできるだけ幅広く入念に検証することが重要であると考える。そこで、大英図書館、公文書館において効率的かつ集中的な資料収集と分析を行うこととしたい。その他のおもな使途は、国内における研究打ち合わせ、および謝金(研究補助と必要に応じて専門知識の提供)に充てる予定である。
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