研究課題/領域番号 |
24510358
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 愛子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10345077)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域研究(イギリス) / 文化史 / ヘリテージ研究 / 文化経済学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、現代において改編・消費・再生産される「伝統的」イギリス文化に付加された諸価値を見出し、そこにどのような「イギリス性(イギリス的特性・イギリスらしさ)」が表象されているかを解釈することによって、現代イギリス社会が包含する特異性を解明しようという試みである。
3年目を迎えた平成26年度の目的は、「パフォーミング・アーツ―「生活のあり方」を支える過去礼賛」であり、人々の過去への憧憬の念を反映して高い需要を保持していると考えられる、いわゆる「コスチューム・ドラマ」(時代劇)に焦点を当て、舞台演劇、映画、テレビで脚色・再生産される正典的(canonical)作品のなかに、どのような文化的・商品的価値が存在するのかを考察することであった。当初は文学作品の映像化に関心があったが、その後、近年ヒットを続けるBBCのテレビシリーズ「Downton Abbey」人気に見られる視聴者の過去想起の様相、BBC子供番組「Horrible Histories」におけるポストモダン的な歴史表象について考察中である。なお、本年は、「伝統的建築物の改造」に関わるテーマで学会発表および研究論文の刊行を果たすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
いくつかの研究目的のうち、「オークション文化」に関する研究論文が刊行できていないことから(3)とした。また、初年度のテーマ「伝統的建築物の改造」を考察するうえで調査対象としていた ‘Hellifield Peel Castle’ については、先方との交渉に時間がかかったもののインタビュー日程で結局折合いがつかなかったことも時間的ロスであった(最終的には、一次・二次資料を駆使して論文を刊行することとした)。
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今後の研究の推進方策 |
本課題において成果を示すため、引き続き研究を継続する所存である。現地調査だけではなくメディア表象の分析など、別のアプローチ方法を応用することによって、現在の遅れを取り戻せるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は予定通り使用したが、平成25年度分の未使用額がほぼそのままスライドするかたちで残ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、海外出張費の割合が前年度よりもやや増えている。これはロンドンにおける研究期間が延びることが予想されるためである。当研究課題は、「創られた伝統」という問題を、歴史や表象研究をはじめ、文化経済学的観点からも領域横断的に解明することに意義があるため、海外出張時には、日本で入手困難な文献をできるだけ幅広く入念に検証することが重要であると考える。そこで、大英図書館、公文書館において効率的かつ集中的な資料収集と分析を行うこととしたい。その他のおもな使途は、国内における研究打ち合わせや研究図書・消耗品購入に充てる予定である。
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