研究課題/領域番号 |
24510361
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
川田 進 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (10288756)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 東チベット / 中国共産党 / 宗教政策 / ヤチェン修行地 / ラルン五明仏学院 / 統一戦線活動 / ソーシャル・キャピタル / 宗教の社会貢献 |
研究概要 |
1.現地調査 2012年8月16日から26日まで、「東チベットにおける宗教紛争の構造」に関する調査を行った。場所は中国四川省甘孜チベット族自治州の康定県、甘孜県、白玉県、色達県、四川省アバチベット族羌族自治州馬爾康県、成都市である。ヤチャン修行地(白玉県)では、アチュウラマ圓寂後のカリスマの動向、アソンリンポチェの位置付け、漢人信徒の行動、チベット人尼僧の増減、インフラ整備状況を調査した。ラルン五明仏学院(色達県)では、中国共産党工作組の動向、漢人信徒の特徴、インフラ整備、鳥葬場の観察と調査を実施した。両地点での調査は2001年以降第6回目であり、過去の調査状況と比較する中で、宗教紛争の発生原因を解明するための手掛かりを獲得した。 2.文献調査 『甘孜州仏教協会志』『西蔵的脚歩』『甘孜州文史資料』『中国宗教報告』『甘孜史話』『宗教政策法規読本』等を購入し、東チベットの宗教空間において、中国共産党の宗教政策がどのように適応されているのかを明らかにする作業を行った。その成果は2013年度に公表する予定である。 3.研究報告 日本現代中国学会関西部会大会(2012年6月9日)にて、「『2008年チベット騒乱』の構造とその後の動向」と題する口頭発表を行った。 4.明石書店が企画した叢書「宗教とソーシャル・キャピタル」のプロジェクトに参加した。第1巻「アジアの宗教とソーシャル・キャピタル」の中に論文を発表した。「宗教と社会貢献」研究会での議論を発展させたものであり、東京と大阪で開催された定例研究会に参加した。 5.中国研究誌『火鍋子』に連載中の「チベットを歩く」に、孫明経が撮影した西康省におけるチベット仏教とキリスト教に関する論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.「2008年チベット騒乱」に関する研究発表を、日本現代中国学会関西部会大会(2012年6月9日)にて行った。「騒乱」を「2008年ラサ騒乱」と「2008年東チベット騒乱」に分けて論じる必要性と東チベットにおける焼身抗議の動向との関連を論じた。「騒乱」の構造を解明する点で大きな進展が得られた。データベース作成については、資料収集の不備により、進展状況は遅れている。 2.海外現地調査は、当初青海省黄南州、海南州、果洛州を予定していたが、現地の政治状況を考慮し、四川省甘孜州とアバ州に変更した。四川省での調査は順調であり、過去の調査内容と比較検討を行う上で、有意義な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1.東チベットの宗教空間の特質を中国共産党の宗教政策の視点から明らかにし、執筆活動を継続する。具体的な内容は「中国共産党の宗教政策――毛沢東から胡錦濤まで」 「『愛国活仏』ゲダ五世の虚実と中国共産党の統一戦線活動」「民主改革・文化大革命から守られたデルゲ印経院」「文化大革命終結後の統一戦線活動と宗教政策」「ラルン五明仏学院への粛正事件」「ヤチェン修行地におけるカリスマ的支配」「漢人信徒の信仰とスピリチュアリティ」「胡錦濤政権の宗教政策と公益活動」「『二〇〇八年チベット騒乱』の構造と東チベットの動向」である。 2.東チベットにおける現地調査を実施する。主に四川省甘孜チベット族自治州にて、中国共産党の統一戦線活動、宗教政策、政府の宗教管理、漢人信徒の動向を調査する。 3.文献調査を実施する。中国共産党の宗教政策、民族政策、統一戦線活動、四川省・青海省・甘粛省・雲南省のチベット地区・民族地区、チベット自治区、インド・ネパールのチベット地区に関する資料を購入し、宗教政策に関する新たな動向を把握する。 4.ヤチェン修行地、ラルン五明仏学院、青海省玉樹震災に関する映像資料の収集を行い、資料集作成の準備を行う。 5.「宗教と社会」学会、日本宗教学会にて口頭報告を行う予定である。荘学本が撮影した西康省とチベット仏教に関する論文を執筆する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.「2008年チベット騒乱」及び宗教紛争発生要因を1940年代に遡って調査する。文献調査を主として実施する。2012年度に新聞「人民日報」「解放日報」のデータを購入する予定であったが、入手困難な状況にあった。中国書籍専門店を通じて、2013年度に再度購入を試みる。同時に「四川日報」「西蔵日報」のデータ購入を試みる。これらの中国共産党機関紙データの購入は、時の政治情勢に左右されることがあるため、計画を変更することがある。 2.雑誌「中国民族」「中国宗教」「西蔵研究」のバックナンバーを購入する。研究課題に関連する和書、中国書、英文書、映像資料を購入する。 3.四川省チベット地区、青海省チベット地区、北京、台北にて、現地調査を実施する。1度または2度の海外調査を予定する。ただし、民族地区の治安と政治情勢、感染症発生状況により、調査地域を変更、または調査を中止せざるを得ないことも想定される。海外及び国内調査時に使用する小型デジタルカメラを購入する。 4.日本宗教学会、「宗教と社会」学会、日本現代中国学会、宗教と社会貢献研究会での発表と聴講、他大学研究者との研究打ち合わせ等に国内旅費を使用する。出張先は北海道、東京、三重県、名古屋市、広島市などを予定している。 5.「五明仏学院資料集」「東チベットの宗教紛争」作成の準備を進める。
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