研究課題/領域番号 |
24510361
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
川田 進 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (10288756)
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キーワード | 東チベット / 中国共産党 / 宗教政策 / ヤチェン修行地 / ラルン五明仏学院 / 統一戦線活動 / 玉樹震災 / 西康省 |
研究概要 |
1.現地調査 (1)2013年8月7日~11日 ネパールのカトマンズで現地調査を実施した。チベット難民キャンプを訪問し、東チベットの宗教紛争と関連の有無を調べた。カトマンズにてヒンドゥー教の実態を観察することにより、ネパールにおけるチベット仏教の特質を抽出した。(2)2013年10月23日~29日新疆ウイグル自治区にてイスラム教とチベット仏教に関する宗教管理の相違を調査した。訪問先はカシュガル、インギサル、ヤルカンド、ウルムチ。(3)龍蔵院(広島市)、萩生寺(愛媛県新居浜市)他にて、宗教ネットワークの形成に関する調査を実施した。 2.文献調査「高原江南桃李園」「寧瑪派源流」「中国共産党西蔵政策研究」「一位蔵族革命家」「天宝与西蔵」「玉樹県志」等を購入し、東チベットの宗教空間において中国共産党の宗教政策がどのように適応されているのかを明らかにする作業を行った。その成果は2014年度末に公表する予定である。 3.研究報告2013年6月15日「宗教と社会」学会第21回学術大会全(皇學館大学、伊勢)にて口頭報告「中国共産党の宗教政策から見たラルン五明仏学院の動向」を行った。 4.中国研究誌『火鍋子』80号(翠書房)に「2013年四川地震と西康省時期の雅安」を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.文献資料は雑誌「民族」「西蔵研究」バックナンバーの購入を予定していたが、古書での入手が困難であり、「玉樹県志」他東部チベットの書誌を購入し貴重な情報を獲得することができた。 2.海外調査は四川省甘孜州、アバ州の政情が不安定であるため、宗教紛争の構造を探る目的でネパールのカトマンズと中国新疆ウイグル自治区にて調査を実施した。 3.『東チベットの宗教空間』を公表する準備が順調に進んだ。「中国共産党のチベット政策と宗教政策」に関する調査と執筆に成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1.東チベットの宗教空間の特質を中国共産党の宗教政策の視点から明らかにするための執筆作業を進める。全体像を明確にする作業は完了したため、細部の修正を進めていく。具体的な内容は以下のとおり。「中国共産党の宗教政策」「愛国活仏ゲダ五世の虚実と軍の宗教政策」「民主改革・文化大革命時期のデルゲ印経院」「文革後のデルゲ印経院と統一戦線活動」「ラルン五明仏学院粛正事件」「ヤチェン修行地の支配構造と宗教NGO」「漢人・華人信徒の信仰とスピリチュアリティ」「仏学院の震災救援と宗教の公益活動」「2008年チベット騒乱の構造と東チベットの動向」。 2.東チベットにおける宗教紛争解明を目的とした現地調査を継続する。ただし、政情が不安定なため、タイ、ベトナム、中国ウイグル、台湾にて他宗教との比較調査を実施することもある。 3.「ラルン五仏学院」資料作成の準備を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.チベット東部の政情が不安定であり、かつ日中間の外交が停滞・対立した状況下にあるため、事前に海外調査の実施先を選定することが困難であるため。中国内陸部の少数民族地区は政情と自然環境の変化を受けやすいため、安全確保を優先させた。 2.日本国内とチベット東部の宗教ネットワーク形成に新たな事情が生じたため、広島市や愛媛県、三重県、岡山県の僧院におけるチベット仏教の受容を調査した。 3.中国からの文献購入は日中間の政治情勢の悪化が障害になる状況が発生しており、計画の作成が不透明な状況にある。 1.「東チベットの宗教空間」に関する論文執筆に注力する。完成度は高いが、細部の修正を行う必要がある。中国青海省、四川省、台湾、ウイグル自治区、タイ、ベトナムにて現地調査を実施する。訪問先は直近の政治情勢を見て選定する。必要に応じて国内にて宗教ネットワークの形成に関する調査を行う。 2.「ラルン五明仏学院」に関する資料集の作成を行い、印刷製本費用を使用する。日本宗教学会にて口頭報告を行う。「宗教と社会」学会、日本現代中国学会、宗教社会学の会、「宗教と社会貢献」研究会での発表と聴講、他大学研究者との研究打ち合わせ等に旅費を使用する。研究課題に関連する中国書、和書、洋書、映像資料、雑誌等を購入する。
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