研究課題/領域番号 |
24510362
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
安武 留美 甲南大学, 文学部, 教授 (10351751)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 革新主義運動 / 母性主義 / 教育 / 婦人参政権 / アメリカ化 / 環太平洋 / ハワイ先住民 / 日系アメリカ人 |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀の初め、ハワイに誕生した汎太平洋婦人協会(PPWA)を中心とする環太平洋女性ネットワークが、アメリカ的システムのグローバル化、台頭する人種及び地域ナショナリズムとどのようにかかわってきたのかを解明しようとするものである。ハワイの白人女性が主導して発足したPPWAの、アジア系およびポリネシア系女性を積極的に受け入れようとする内包的姿勢に注目し、ハワイでの白人、先住民、アジア系女性の関係およびハワイとアメリカ本土、東アジア諸国(特に日本)の関係を明らかにしながら、アメリカ的システムのグローバル化をジェンダーの視点から考察しようとするものである。 平成26年度は、王制転覆後の白人女性たちのアジア系二世たちへの母性主義的アメリカ化の働きかけが、どのような政治的意義を持っていたのか、またその母性主義的活動に参加したアジア人移民女性たちの役割について、文献の解読を進め、一つの章にまとめた。その成果の一部は、7月7日から11日まで米国のオハイオ州立大学で開催されたTransnational Feminisms Summer Institute のワークショップで発表し、厳しいかつ有意義なコメントを得た。 また、これまでの成果を1)ハワイにおけるアメリカ女性宣教師の福音活動とハワイ先住民女性の政治権力の喪失と王制転覆、2)アメリカ併合後のハワイ系女性を中心とする婦人参政権復活のための運動、3)アジア系二世向けの白人女性たちの母性主義的活動という3つ章に収めて出版社に送付し出版の可能性を打診した。おおむね好意的な反応を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の目標は、ハワイにおける女性の福音活動、婦人参政権運動、母性主義的運動、と平和運動に関する4つの章の原稿を書き上げる予定であったが、平和運動はあまりにも多くの事象と関係しており、最後の章をまだ書き上げることができていない。しかし、Transnational Feminisms Summer Institute のワークショップで得た貴重なコメントに基づいて、最初の3つの章を見直し書き改め、かなり完成度の高いものにすることができた。これは大きな前進であったと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
最後の章に関する今までの研究成果を整理しながら、ハワイでのPPWA設立までの歴史的背景、複数の国際組織間のかかわり、またハワイ、米国、日本、(韓国、中国)との関係を解明するために更なる資料の解読を進め、この章の執筆を完結する。 また、成果の一部は、2015年8月に中国済南市で国際歴史科学大会に連携して開かれるInternational Federation for Research in Women's Historyの会議と、2016年1月に米国アトランタ市で開かれるAmerican Historical Associationの年次大会で、発表する予定である。余裕があればハワイ大学女性学部のコロキュアムでも成果を発表し、フィードバックを得たい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
これまで書きためた原稿の見直しと推敲を優先させたため。それには2つの理由がある1)本年度、オハイオ州立大学でのワークショップで成果を発表したことにより、最初の3章に関わる貴重なアドバイスや文献情報を得ることができ、その部分の見直しと改訂を行った。2)21014年12月に刊行された1次資料の復刻版『地の塩』の後半5巻分の分析を、最終章に盛り込みたかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
1)最終章の執筆に必要な補足資料の収集、2)国際会議での発表のための旅費、3)ネイティブチェックの費用として使用する予定である。
|