研究課題/領域番号 |
24510363
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州国際大学 |
研究代表者 |
大形 里美 九州国際大学, 国際関係学部, 教授 (30330955)
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研究分担者 |
大形 利之 東海大学, 国際文化学部, 教授 (80316273)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インドネシア / イスラム新興ビジネス / イスラム復興運動 / イスラム金融 / ハラール食品 / ハラール化粧品 / ムスリム・ファッション / ムスリマ専用サロン |
研究概要 |
研究代表者(大形里美)は、研究対象をムスリマ専用サロン、ハラール化粧品、イスラム関連アニメ、ムスリム専用住宅に絞り、本年度は、インドネシア国内4都市において2回の現地調査を実施した。一回目の調査では、ムスリマ専用サロン、女性用サロン、およびハラール化粧品の製造/販売に関わっている企業を訪れ、イスラム関連企業創業の経緯、事業内容などについてインタビューを実施した。またバンドン、ジャカルタのハラール認証交付機関(MUIのLPPOM)を訪ね、インタビューを行った。二回目の現地調査では、ムスリマ専用サロンの他、ムスリム専用ブティック、イスラム関連のアニメ制作会社二社、ムスリム専用住宅の販売を手がけている業者も訪問し、イスラム関連ビジネスの動向についてインタビューを行った他、男女混合サロンも視察し、ムスリマ専用サロンとのサービスメニューなどの比較を行った。 研究分担者(大形利之)は、研究対象をイスラム金融に絞り、現地調査は一回のみの実施となったが、インドネシアにおけるイスラム金融がどのような特徴と仕組みをもったものであるのか、どのように普及してきたのかを資料研究を中心に行った。 第一回目の調査(2012年8月)では、ハラール食品を認定するイスラム協会、食品の輸出入に関わる農業省、イスラム教に関する情報を提供してくれるイスラミック・センター、そして投資調整庁におけるインタビューに成功し、今後の調査に向けた協力の約束を取り付けることができた。ハラール食品については日本でもすでに知られるところであるが、インドネシアにおけるイスラム復興運動との関わりによって、外国人観光客誘致に力を入れ始めた日本でも、急ぎその対応が必要とされている。 現地政府でのハラール食品についての法規制に関する調査と、日本における対応の進捗状況をまずは明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画からの変更点は以下の通りである。 1.当初の計画では、研究対象とするイスラム新興ビジネスの分野として、ムスリム・ファッション、ムスリマ専用サロン、ハラール化粧品、イスラム関連アニメなどを計画し、すでにビジネスとしての成立時期が早く、すでにいくつかの先行研究が存在するイスラム金融やハラール食品については研究対象に含めていなかったが、研究分担者の意向により研究対象に含めることとなった。 イスラム金融は特有の仕組みをもったイスラム金融のさまざまな商品を理解すること自体が困難であることもあり、研究対象に含めていなかったが、研究分担者の意欲的な取り組みにより、研究対象に含めることになった。また、研究分担者は今後、日本へのハラール食品の輸出ビジネスなども研究対象とする予定であり、本研究の調査対象分野が広がり、イスラム新興ビジネス発展とイスラム思想との関連の全体像がより広く把握できると期待される。 2.当初の計画では、研究代表者による現地調査の対象を、ジャカルタ、スラバヤ、スマラン、メダンを拠点とする企業としていたが、インターネットによる情報収集の結果や、現地の研究協力者の意見等も考慮した結果、調査地域をジャカルタ、バンドゥン、ジョクジャカルタ、スマランの4都市とし、一回目の現地調査からイスラム新興ビジネスを担う企業を訪問し、インタビューを開始した。 イスラム諸組織の幹部に対するインタビューは25年度の現地調査で行う予定であったが、ハラール化粧品にハラール認証を交付している機関であるMUI(インドネシア・ウラマー協議会)のLPPOMには一回目の現地調査でインタビューを行った。またイスラム急進派組織MMI、近代派イスラム組織Persis、および傘下の女性組織にも一回目の現地調査でインタビューを実施することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、本年度も引き続き二回の現地調査を実施することを予定している。現地の研究協力者に依頼したアンケート調査の成果を回収するとともに、追加のインタビュー、及び資料収集を行う。 より多くのムスリマ専用サロンや、ムスリム専門ブティックの経営者にインタビューを行い、どのような教育的背景をもつ人物であるのか、どのようなイスラム教義理解と実践をしている人物か、イスラム復興運動との関わりがどのようであるかなどを考察する。 また以下の組織にインタビューを行うことを予定している。近代派イスラム組織ムハマディヤー、および傘下の女性組織、伝統派イスラム組織NU(ナフダトゥール・ウラマー)、および傘下の女性組織、HTI(Hizbut Tahrir Indonesia)、イスラム急進派組織FPI(イスラム擁護戦線)。 日本国内では、現地資料で得られた研究成果をまとめる作業に取りかかる。具体的には、インタビュー調査、資料収集で集めた情報をまとめるとともに、アンケート調査で集めたデータを、統計ソフトを使用して分析する。 研究分担者は、インドネシアにおけるイスラム金融の発展の歴史と現状を報告書にまとめるとともに、イスラム金融商品を取り扱っている銀行関係者にインタビューを行い、金融機関がどのような販売戦略をとっているのか、利用者がどのような関心や動機でイスラム金融商品を利用しているのか、などについて情報を収集する。そして現代インドネシア社会においてイスラム金融がどのような人びとに受け入れられ、どのような位置を占めているのかを分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は、研究費を2回の現地調査の旅費に使用する他、アンケート調査実施のための諸費用、アンケート調査のデータ入力作業の委託費、また国内の学会で中間発表を行うための旅費等に使用する予定である。 研究分担者は、研究費を1回の現地調査の旅費、現地調査時の諸費用、文献資料購入費等に使用する予定である。
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