研究課題/領域番号 |
24510363
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研究機関 | 九州国際大学 |
研究代表者 |
大形 里美 九州国際大学, 国際関係学部, 教授 (30330955)
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研究分担者 |
大形 利之 東海大学, 国際文化学部, 教授 (80316273)
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キーワード | イスラム / インドネシア / イスラム運動 / イスラム・ファッション / ハラール化粧品 / ハラール認証 / イスラム銀行 / イスラム企業家 |
研究概要 |
大形里美=前年度に引き続き昨年度も8月26日から9月15日までの約3週間、及び2月23日―3月14日の約3週間、計二回、6週間の現地調査を実施した。1回目の現地調査では、現地の研究協力者に依頼したアンケート調査の結果を回収するとともに、追加のインタビュー、及び資料収集を行った。具体的には、インドネシアを代表する大手のムスリマ専用サロンMoz5のオーナー、同国のムスリム・ファッション業界を代表するデザイナーにインタビューを行ない、彼らの教育的背景、イスラム教義理解と実践のあり方、イスラム復興運動との関わりなどについてインタビューを行った。2回目の現地調査では、ジョクジャカルタのムスリム企業家グループの代表や会員に面会し、グループの活動内容や目的・目標、イスラム教義理解と実践のあり方、イスラム運動との関わりなどについて聞き取り調査を行った他、APPMI(インドネシア・ファッション・デザイナー・企業家協会)の会長、ムスリマ・ファッション部門の部会長に面会し、インタビューを実施した。11月には、アンケート調査の結果分析し、インタビュー調査や文献研究の結果も合わせて、学会で成果の中間報告を行った。 大形利之=2013年度は5月と8月、計10日間の現地調査を実施し、ジャカルタにあるハラール認証交付機関(LPPOM)を訪ね、食品、薬品、化粧品担当者にインタビューを行なうとともに、関連資料・書籍の収集を行った。また、JICA(国際協力機構)からの日本人出向者がいる投資調整庁(BKPM)では、同国のマクロ経済状況全般について説明を受け、イスラム教の教えに沿ったビジネスへの日本企業の参入、および今後の発展の可能性についてインタビューを行った。この他、イスラム問題に詳しいNGO(非政府組織)スタラ研究所の研究員や地元記者とも面談をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大形里美=イスラム企業家へのインタビュー調査、及びイスラム新興ビジネスの顧客に対する意識調査を順調に遂行することができた。インドネシアを代表するムスリム・ファッション・デザイナー数名、そしてやはり同国を代表するムスリマ専用サロンのオーナーにインタビューを実施することができたことは大きな収穫であった。そしてイスラム新興ビジネスの顧客の意識調査を実施するにあたり、ムスリマ専用サロン・女性専用サロン・男女兼用サロン、三種類のサロンの利用客の意識を比較するための意識調査を実施し、計画通り、その成果をインタビュー調査や文献調査の成果と合わせて中間発表としてまとめることができた。 意識調査は、サロンの利用客の他、ムスリム・ファッションのデザイナー志望者の団体のメンバーに対しても実施しているが、こちらに関しては、研究協力者の健康上の理由で、サンプル回収が大幅に遅れてしまったため、中間報告に成果を反映させることは時間的に間に合わなかった。 NU,ムハマディヤー関係者にはインタビューを実施することができたが、イスラム擁護戦線(FPI)関係者、Hizbut Tahrir Indonesia(HTI)関係者にはインタビューがかなわなかった。しかしMTAやMMIなど別の団体にはインタビューを実施することができたので、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。 大形利之=イスラム教徒の社会生活上、どこまでイスラムの教えが浸透しているのか。金融面において、イスラム銀行が一般銀行を補完するものととらえられ、とりわけイスラム庶民信用銀行などから中小零細企業向けの融資が徐々に拡大傾向にあることが先行研究、中央銀行の資料、また面談から確認できた。イスラム化の広がりが同教徒らにイスラム銀行を選択するように向かわせているのかどうか、この検証にも引き続き取り組んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
大形里美=本年度は、8月―9月にかけて現地で追加調査を実施するとともに(本年度の現地調査では、主にイスラム新興ビジネスの企業家らに思想的な影響を与えている何人かの若手のイスラム説教師にインタビューを試みたいと考えている)、インドネシア国内2か所(インドネシア大学日本研究センター、ムハマディヤー大学ジョクジャカルタ校において研究発表会を実施すべく、現地の研究協力者と打ち合わせを行う。現地での研究発表会においては、本研究で得られた知見を現地の研究者に発表し、現地の研究者や企業家ら意見を得ることを目的とする。 11月には平成26年2-3月に実施した現地調査の成果、8-9月の追加調査の成果、及びムスリム・ファッション・デザイナーの志望者らに対する意識調査の結果などを反映させる形で、日本インドネシア学会で成果報告を行う予定である。 2月―3月には、再度補足的な調査を実施するため、最後の現地調査を実施する予定である。その機会にインドネシア大学大学大学院で成果を発表できるよう日程を調整する。 帰国後は、すべての研究成果を報告書にまとめる。 大形利之:イスラム新興ビジネスに関連してイスラム金融の分野にもう一歩踏み込んで研究していきたいと考えている。イスラム金融に関する専門家が、ジャカルタ市内にあるジャカルタ国立大学に在籍しており、すでに彼女の本を入手し、読破したところである。その中では、従来の先行研究でほとんど記述がなかったイスラム銀行からの融資に関して、融資の方法と具体的事例、またそのリスクが明らかにされていた。本年度は同大学への直接の訪問、面談を考えており、可能であれば2回の訪イ期間中に実現させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
大形利之(研究協力者)が、学内業務のために予定していた現地調査の日数を確保することが困難になったため、短期の出張となった。そのため出張旅費に充てていた予算に残額が生じた。 本年度は、大形里美(研究代表者)に予算配分を多めにとり、補足の現地調査を2回実施することにした。現地滞在期間中に、研究成果の中に、現地の研究者やイスラム企業家らのコメント・意見を反映させるために、関係者を招いた研究発表会をできれば8月に2回、2月に1回、計3回それぞれ別の大学・研究機関で実施したいと考えている。
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