本研究では、マレーシアにおける複数の民族集団の「家」の特徴の通時的・多元的な比較研究を行った。「家」を、家族の成員に限らないさまざまな人々が多様な人間関係を実践する現場として捉え、そこに内包される人間関係の発展に応じてそれ自体の形態と構造が変化する動態的なものとして分析を行った。そこから、「家」においては、容器(建築物としての家屋)とその中身(家財とその配置)、これら二つを構成する力学(そこで実践される人間関係)の三者の交互関係に、各民族集団の特徴が現出することが明らかにされた。また、「家」における実践のうち、特に食に関わる実践が社会関係のダイナミクスに大きく影響していることが明らかになった。
|