研究課題/領域番号 |
24510365
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
重冨 真一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, センター長 (00450461)
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キーワード | 社会運動 / 農民運動 / タイ地域研究 |
研究概要 |
本研究は、1970年代のタイにおいて展開した農民運動の実態を把握することを目的としている。この時期の農民運動は、民主化を求める学生運動と共に、よく知られた現象であるが、農民運動全体の動きについては分析があるものの、農村レベルでどのような問題があり、どのような運動が展開されたのかは研究されていない。4年間の研究の2年度である2013年度は、前年度に引き続き北部(チェンマイなど北部上部)を中心に農村調査を行うと同時に、中部上部での運動の状況について、農民を支援した学生活動家に会って、話を聞いた。 北部については、農民運動があった村で当時のリーダーから詳しく運動の展開について聞き取りをした。とくにランプーン県ムアン郡の当時の活動家が積極的に協力してくれたので、ランプーン県のいくつかの村で詳しい聞き取りができた。そこでわかったことは、(1)地代引き下げ要求運動に参加した農民は、必ずしも借地農とは限らず、社会的な関係(親戚、友人)をもとに連帯して地主と闘った。(2)地代統制法が成立したあと、それに実効性をもたせるためには、村レベルでの実力行使(地代の法定額支払い)が必要であって、それを可能にしたのが住民の共同性であったこと、などである。 中部上部の運動は、北部と異なり、地域的な紐帯がほとんど無い中で組織された。リーダーとなった農民が、ネットワークを広げる形で運動を拡大していった。そのため、リーダーが弾圧されたり、活動できなくなると、運動も消えてしまったと思われる。ただしこのエリアの運動については、情報提供者が極端に少なく、調査は難航している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北部タイでの運動については、実際に運動に関わった農民リーダーや支援学生から聞き取りができた。特に村レベルでの組織形態について詳しい聞き取りができた。中部タイでの運動については、運動を支援した学生の組織や当時のリーダーがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
中部の運動については農村レベルでの情報が不足しているので、農村で支援に入った学生活動家から状況を聞き取る必要がある。また文献(当時の新聞や政府文書)からの調査を強める必要がある。東北地方についてはまだ調査できていないので、まず東北の当時の運動状況を知るリソースパーソンから聞き取りをおこなう必要がある。当時の農村経済の状況を把握するための統計的調査と当時の農村調査資料の発掘が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の現地調査の期間が予定よりも短くなったこと、航空券代が予想よりも安くすんだことなどのため、予算に余剰が生じた。 平成26年度はアジア農村社会学会がラオスで開催され、そこでの報告を予定している。学会出席のための渡航費と滞在費、および学会参加費に繰り越し分を充当する予定である。
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