タイでは1970年代に活発な農民運動がおこった。これまで政府との交渉やバンコクでの集合行為については研究がなされてきたが、農村レベルの運動についてはほとんど記録がない。そこで本研究では、農民運動参加者や運動を支援した学生活動家から聞き取りすると同時に、当時の地方紙から実態を把握した。運動が活発だったのは、北部と中部地方である。北部では農民が村レベルで団結し、地主に地代引き下げを要求した。中部では地方レベルの農民リーダーをたよって広い範囲から農民が連携し、負債で喪失した土地の取り戻し運動をおこなった。いわば北部ではコミュニティ型、中部ではネットワーク型の運動が組織されていた。
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