研究課題/領域番号 |
24510370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
金井 郁 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (70511442)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 雇用システム / 非正規雇用 / 女性 |
研究概要 |
本研究の目的は従来の日本の雇用システム研究の対象とされて来なかった女性、非正規、専門職の労働者について雇用ルールを解明する実証研究を行い、それらの労働者を含めて理論化することである。 今年度の研究では、「女性正社員」の雇用ルール解明に向けた研究を行った。まず、女性労働をめぐる社会規制が、男女雇用機会均等法成立以降、どのように展開され、なぜ「雇用の多様化」という名のもと、特に90年代以降、雇用の非正規化が女性に偏って進み、女性全体にとっては労働条件の低下という「雇用劣化」につながったのかの検討を試みた。男女雇用機会均等法以降の労働政策は、性別役割分業と密接に結びついた雇用管理区分における男女間の偏りを生み出し、そのことによる労働条件格差が「合理性」のあるものとして正当化するように機能してきたといえる。さらに、従来のコース別雇用管理制度下の正社員の多様性と現在注目される「多様な正社員」は、職種や勤務地限定とするなど外形的な雇用管理区分の特徴は類似しているが、目指すべき理念的な形態から考えると、その雇用期間を「短期」とするか「中長期」とするのかに差があることが明らかとなった。そのため、「多様な正社員」施策で中・長期勤続を想定した能力開発や配置、昇進、昇格ルールを検討するとすれば、キャリア展開を含めれば従来の一般職女性よりも処遇が高くなるような人事施策となる余地もある。しかし、キャリア形成に上限があり勤務地が限定されている多くの女性正社員の採用廃止や労働条件切り下げを伴って、「多様な正社員」の雇用管理区分が生まれる可能性も否定できないといえる。 実証研究としては、生命保険業界の営業職員体制の聞き取り調査を進めた。日本の営業職員は、雇用関係を持ち社会保険に加入する一方、能率給の度合いが高く雇用保障もされていない。来年度も引き続き他の正社員体制といかに共存する仕組みがあるのかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正社員女性、非正規雇用の雇用ルール解明に向けた研究は、①制度枠組みとしての男女雇用機会均等法、パートタイム労働法、現在議論されている「多様な正社員」施策については該当年度の研究を達成し、成果物(論文3本執筆、国際学会1回報告)を出すこともできた。 ②実証研究として、生命保険業界の営業職員体制、運輸業界、小売業界の正社員と非正社員の関係について取り組んでいる。該当年度では、全て調査開始することは出来ているが、調査自体が終わっていない(計画としても次年度も実施予定)。引き続き、調査に取り組み課題の遂行を行なう。ただし、途中成果報告として、国内学会1回、国際学会1回の報告を行った。 そのため、研究全体では成果報告を含めて、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、正社員女性、非正規雇用の雇用ルール解明に向けた実証研究に取り組む。特に9月から在外研究でドイツに1年間滞在するので日本の企業や労働者への聞き取り調査は、8月までに目処をつける。9月以降、論文執筆などに入る。 雇用制度の理論的研究を進めるため、選考研究の整理も同時に行う。 9月以降、マースデンの雇用ルールの理論で言及されたフランス、イギリス、ドイツの雇用ルールと欧州に共通した資格制度の関係についての文献研究と一部聞き取り調査を実施する。その際、資格制度の女性に対するインパクトに注目する。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会で生命保険業界の営業職員体制に関する報告を行う予定であるため、学会報告に関わる研究費を使用する予定である(渡航費、滞在費、英語校正費など)。9月以降は、ドイツを起点に調査や学会への参加を行う費用を申請する。 資料収集費用(書籍、雑誌購入、コピー、収集のための旅費など)を計画している。
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